――アイデアがよくてもそれを形にするのは難しいですよね。

「私が思いついたのは超音波で腸内をモニターする端末というアイデアだけです。実際にハードウェアを開発し、身体を張って実証データを取りながら形にしていったのはチームの力です。高校時代の同級生、正森良輔をはじめとして、同じタイミングで超音波装置を構想しているエンジニアだった九頭龍雄一郎さんや、プロトタイプもない段階で出資してくれた人たちなど、多くの人との幸運な出会いがありました。彼らが趣旨に共鳴して当初はボランティア状態で開発に取り組んでくれたおかげです」

まずは排尿予知デバイスで
介護施設に導入

――現在製品化はどこまで進んでいるのですか。

「もともとは排便を念頭に置いていたのですが、現在は排尿予測デバイスとして、いくつかの介護施設で実証データを取っていて、製品としてはいつでも出荷できる状況です。2月中には国内の介護施設約10ヵ所で導入します。デバイスの貸与と、アプリのメンテナンスなどのサービスを一式として月に6千円から1万円の間での運用の予定です。年内には個人の消費者にも販売できるよう準備を進めています。

現在、実証実験中のデバイス。テープで下腹部に貼り付けて固定する。タブレットで状況がリアルタイムに確認できる

 実証データでは、膀胱に80%まで溜まると、尿意を感じるということがわかりました。ただし、便意や尿意というのは、きわめて繊細なものです。そのときほかのことに集中していると感じにくいこともあります。数値で客観的に把握してアラートを出すことで、気づかずに排泄が間に合わないということも防げます。データを蓄積することで、何時から何時までのあいだに何回何cc排尿する、ということがわかるので、寝る前に適切な大きさのパッドを当てることで安眠できますし、あるいはその時間にトイレに誘導することで、オムツから解放することにもつながります」

――排尿から、というのはなぜですか。

「理由が3点あります。第一に、お腹に超音波を当てた時、膀胱のほうが距離が近く、測定が容易であること。そして便は形状や粘度がまちまちですが、尿は液体で安定しているので、計測しやすいこと。三つ目は、便に比べて尿は頻繁に排泄されるので、データが取りやすいのです。結果的に製品化を早められると判断して排尿デバイスを先行させました。改めて排便について実証データを蓄積しながら、製品化を進めているところです」