異業種への投入で成功している上記3社を見ると、異業種ではありながら、本業と何らかの親和性を持っていることが指摘できます。ソニーの場合にはインターネット技術、7&Iの場合にはコンビニ店舗へのATM設置、ワタミの場合は介護の食事です。いくら強力なブランドを持っていても、まったく親和性のないところに参入しては成功は難しいものです。
ハイブリット車に続き
トヨタが新しいライフスタイルを提案?
トヨタの場合、強力な“トヨタ”ブランドを住宅事業に導入し、“トヨタホーム”を立ち上げました。しかし自動車と住宅は親和性に乏しく、トヨタブランドを充分には活かしきれない状況が長年続いてきました。ところが、前述の通り、ここにきて次世代自動車とスマートハウスの登場で、自動車と住宅が非常に近い位置に接近してきました。
トヨタはプリウスのプラグインハイブリッド車(PHV)の量産を来年から開始する予定です。PHVは電気とガソリンを併用する点では、ハイブリッド車と変わりませんが、大きな違いは、搭載されたバッテリーに外部から充電できることです。逆に言うと、PHVの性能をフルに発揮するには、住宅に充電設備を設置することが必要不可欠です。充電設備を一般家庭に設置するのはトヨタホームで工事ができます。ですから、トヨタがPHVを購入した顧客にトヨタホームを紹介し、同社が充電設備の工事を請け負うという1つの流れが出来上がります。
加えて、この受注をきっかけに将来的なリフォームや建て替え需要を取り込めるチャンスも出てくるでしょう。さらに、豊田市の住宅団地のように大規模にスマートハウスを建築するプロジェクトが各地で展開されれば、住宅販売とPHVの販売に相乗効果が生まれ、トヨタハウスの業績にも好影響を与えることが期待できます。
自動車と同じトヨタブランドを掲げながら、あまり芳しい成果をあげられなかったトヨタの住宅事業ですが、技術の進展と社会情勢の変化が、やっと望んでいた成果をあげるきっかけになりそうです。