社会保障の網の目からこぼれた患者を救う
無料低額診療を行う医療機関がある

 前出のAさんやBさんのように、所持金もほとんどなく、からだを壊して収入を得るすべがなくなった場合、本来は生活保護の対象になる。

 生活保護には「医療扶助」という制度があり、市区町村の福祉窓口で保護が認められれば、健康保険料や医療費の自己負担なしで健康保険と同じ内容の医療を受けられる。

 以前は、受給要件にあてはまるケースでも、生活保護の窓口では申請を受け付けない「水際作戦」というものが取られることがあったが、湯浅誠氏が代表を勤める「反・貧困ネットワーク」などの取り組みによって改善されてきている。ソーシャル・ワーカーなどに相談すれば、生活保護の申請は受け付けてもらいやすいので、ひとりで悩まずに相談をしてみよう。

 とはいえ、生活保護を受けられるのは、家族からの仕送り、行政からの福祉手当、預貯金や自宅などの資産の合計が、国が決めた最低生活費を下回る場合だ。失業期間が長引いたからといって、すぐに生活保護が受けられるわけではない。そのため、生活保護は受けられないけれど、家賃や食費で精一杯で医療費まで手が回らないという人が無保険となり、医療にかかれない実態を作り出しているのだ。

 このように社会保障の網の目からこぼれ落ちた人を救っているのが「無料低額診療事業」だ。戦後の混乱期の1951年に始まったもので、通常なら3割(70歳未満)かかる医療費の自己負担分を、経済力に応じて減額、または免除してもらうことができる。

 対象となるのは、低所得者、ホームレスの人、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者など。たとえば、健康保険証をもっていない無保険の人、短期保険証や資格証明書を交付されている人、失業して収入がない人、家族のDV被害から逃れるために住民票を取れずに健康保険証を入手できない人などがそれに当たる。

 無料低額診療を行うには都道府県への届出が必要で、すべての医療機関でこの事業を行っているわけではないが、医療生協や民医連の関連施設が実施していることが多いようだ。受付などに「無料低額診療を行っています」「医療費でお困りの方はご相談ください」などと書かれた張り紙があったり、パンフレットなどが置いてあるので注意して見てみよう。