システム化する範囲は「経営方針」で決まる

このように、社内の全業務をひと目でわかるようにしたものが「業務フロー図」

これは、『システムを「外注」するときに読む本』に登場する、架空の化粧品会社のマーケティング業務をフローにしたものです。

たとえば、図の中段やや右側にある「ウェブセールス」という業務をシステム化すべきかどうかを、考えてみましょう。

たしかに、お客からの相談や要望を元に、個々のお客ごとに欲しがりそうな商品をWebで紹介する機能があれば、営業部門は喜ぶでしょう。しかし、全社的に見たとき、本当にこのウェブセールスのシステム化に多額の費用と労力をかけるべきなのか。判断基準は、その企業の「経営方針」にあります。

もしも経営方針が「顧客別セールスの強化」であるなら、ぜひ、ここのシステム化を行ないたいところです。しかし、経営方針が「Webを通して会社のイメージを上げること」ならば、セールスのシステム化は無駄な投資になり、「ネットでアンケートに答えただけなのに、いきなりセールスの電話がかかってきた!」などと反感を買って、むしろ会社のイメージダウンにつながる可能性すらあります。

営業部が喜んだとしても、それは部分最適なシステムであって、真に経営に寄与するものではないのです。

実際、世の中にあるシステムでも、システム化の目的から外れた機能を実装して、経営的な視点から見ると効果のない投資をしている例が、かなりあります。

たとえば、私の知っているある工場では、生産効率化を目指したシステムを作りました。そこで、「せっかく生産計画を立てるなら」と、工員の労働時間管理から勤怠管理、給与システムともつなげようとして、余計な開発費用を投資しました。

結果的に、システム自体の品質は悪くなかったものの、勤怠や給与の業務はそれほど効率化せず、さらに生産管理業務の担当者からは「余計な機能がついてシステムが複雑で使いにくい!」と文句を言われた例があります。まさに、「金食い虫の役立たず」です。

では、こうしたことを防ぐためには、どうすればいいのでしょうか?