企業が「オフ会に来いよ!」と誘われることはない

 ここで、前回のコラムでご紹介した次の図をもう一度ご覧ください。

縦軸に「拠りどころ」、横軸に「求めるもの」をとったマトリックスでソーシャルメディアを4つに分類する。

 フェイスブックは現実生活のソーシャルメディアに属します。このエリアでは、参加者の帰属意識(ロイヤルティ)の矛先は友人どうしの交流に集中しているので、それが商品や企業へと転化することはなかなか起こりづらい。

 現実生活のソーシャルメディアは、個人と個人が直接つながり合う場であるので、アムウェイやニュースキンのような、やはり個人どうしのつながりを活かすビジネスか、ソフトバンクのようなカリスマ社長を擁するといった例外的な企業を除いて、消費者とコミュニケーションを成立させることは困難です。企業は組織であるため、ひとりの個人としてつながることができないからです。

「オフ会に来いよ!」と企業そのものが個人に誘われるシーンは、現実的にはありえません。企業がこのエリアで消費者とのコミュニケーションを図るとすれば、まず、部署のスタッフを個人のレベルまで分解し、それぞれが個人としてつぶやいたり、日記を書いたりすることから始めることになります。

 あくまで個人としてふるまい、たくさんの足跡を残しまくり、地道に知人を増やします。知人の日記にコメントをつけるなどして、オフ会に誘われるのをじっと待ちます。オフ会のチャンスが訪れたら、飲んで飲んで飲みまくり、飲みつぶれたところで、おもむろに自社商品を懐から出して、「これ俺がつくったんだけど!」と叫ぶ。そして「たけちゃんがつくったものだったら買うよ」といってもらう――やはり現実的ではありません。

現実生活のソーシャルメディアにおけるネットワークは、個を中心に扇状を描く。

 このエリアは、個を中心に扇状を描く特性上、つながり合った企業の担当者と消費者との間には、ひとりひとりと1対1のコミュニケーションが発生します。

 企業がその膨大な費用を利益に転じさせるには、相当の高額商品でないかぎり厳しいですが、たとえば、外国車のディーラーのような高額商品を扱う仕事は、ひとりの顧客とのやりとりをほかの顧客に知られることを嫌う傾向があります。「あなただけ」という言葉がセールストークであるとあからさまに露呈することは、双方にとって気持ちのよいものではありません。