今回の東日本大震災では、地震そのものの被害ではなく、津波や液状化といった地震が原因で起こった被害も多く見られました。そのため、地震保険の認定方法や補償内容の修正が検討されています。

この6月に『地震保険はこうして決めなさい』を上梓した、損害保険に詳しいスペシャリストである、清水香さんが、仙台を訪れ、地震保険の現状をリポートする最終回!

液状化被害の認定方法など、保険内容の見直しも

 東日本大震災では液状化による被害も多発しました。従来、地震保険の損害調査ではおもに揺れによる損害に着目した調査方法が採用されていましたが、日本損害保険協会では、6月に液状化特有の損害に着目した損害認定方法を追加しました。

 主要構造部(柱など)が1度を超える傾斜、または30センチを超える沈下がある場合には全損、傾斜が0.5度超1度以下または15センチ超30センチ以下では半損、などとなります。

 新しい基準は3月11日からさかのぼって適用されます。家屋に傾きが生じて修復に数百万円以上かかるというケースでは、大きな助けになるでしょう。

 さらに補償内容についても見直しの検討が始まるようです。

 検討されているうちの1点は、損害認定。現状では、全損、半損、一部損の三段階で保険金の額が決まりますが、半壊と一部損の間にもう一段階、損害区分を設け、より実態に即した保険金の支払いを行なう、というものです。

 区分が細分化された方が、保険金に対する不満は生じにくくなるかも知れません。しかし、私はこの方向性には賛成できません。

 地震保険が損害の大きさを3つに区分しているのは、損害をシンプルに区分することでスピーディな支払いを行なうためです。細分化されれば、支払いまで時間がかかることも予想されます。

 そもそも地震保険の存在意義は、「地震や津波による大きな経済的ダメージに備える」というものです。その意味では、一部損という損害区分をなくし、全損や半損の場合の補償を充実させる方向に進むのが理想的です。

 保険に加入している以上、少しの被害でも保険金を受け取りたいというニーズがあるのも確かですが、いつ甚大な被害が及ぶかもしれない地震に備える地震災害において確実に保険金の支払いを受けるには、優先順位をつけなければなりません。そして優先すべきは家計では到底カバーできないような大きな損害ではないでしょうか。