この手記の通り、欧米で行われている無痛分娩の多くは、医療設備やスタッフが十分に整った環境下で行われており、日本で一般的に行われている無痛分娩とは根本的に異なるのです。

 具体的には、(1)産科医一人だけでなく、麻酔科医や新生児科医らと一緒になって専門性の高い医療介入がなされていること。そして、(2)すぐに救急医療にも対応できる施設で行われているので、事故が起こってから別の病院に転送し、その間に手遅れになってしまうことがないということ。さらに、(3)24時間体制で行われているために、子宮収縮薬(陣痛誘発剤・陣痛促進剤)による計画分娩をする必要がないということ――などの面で大きな違いがあります。

 日本でも、欧米型の無痛分娩を実施している医療機関もあるかもしれませんが、多くはそうではありません。日本では、未熟な医師が一人でも実施できてしまうのです。実際、上記の神戸のケースでは、事故後に医師は、「私は産婦人科をほとんどしておらず、ひよこだった」と家族に話したと言います。

 また、2016年7月18日に福岡県で開かれた「日米お産サミット」で、イエール大看護大学院のアリソン・ショートン准教授は、「アメリカでは無痛分娩がとても増えているが、日本では、その割合が少ないのでそれは素晴らしいことだ。医師は医療介入をしたがるが、アメリカでも、助産師たちはこころよく思っていない」という主旨の発言をされていました。

厚労省研究班の緊急提言
無痛分娩は高いスキルとマンパワーが必要

 今年4月16日の日本産婦人科学会で、厚生労働省の研究班が、医療機関に対し、無痛分娩を行う際には十分な医療体制を整えることを求める緊急提言を行いました。その主な内容は以下の通りです。