利回りはどんどん下がり
ファンド・マネージャーは苦悩する
ここまでをまとめると、
・ファンドは毎日、持っている債券を時価評価し、それを発表しなければならない。
・評価が悪い(評価額が低い)と格好が悪いので、短期債を組み入れて、金利上昇時に備える。
・つまり、金利上昇時は債券の時価評価額は下がるが、特に長期債ほど下げがきつくなるので、長期債ばかり保有していると、金利上昇時の時価評価がダダ下がりになる。そこで、短期債を交ぜて、どんな時でもそこそこの時価評価になるようにコントロールする。
※ 債券と市場金利の関係を理解することはとても大切です。一方で、こここそが債券を理解する時の多くの方の「つまずきポイント」になっています。私の本では何ページにもわたって詳しく、しつこく解説しています。ぜひご覧になってください。
さて、話を戻します。
市場金利が上昇しているときに債券を時価評価すると、価格は下がるのでした。
逆に市場金利が下落している時は、債券の評価額は上がります。
そこでファンド・マネージャーが値上がりした債券をうまく売って売却益を出すことはできます。
でも、そこでうまく売ったとしても、次の投資先に困ります。なぜなら、金利は低いのですから、投資先として魅力的な債券は見つかりません。
投資家としてできることは、こうした評価額が高くなったときにそのファンドを売ってしまうことです。でも、毎日、評価額をチェックしている一般投資家はそうはいないと思います。それにいつ売ったらいいのか判断に迷って、それがストレスに繋がりそうです。
「なるほど。でも解約が増えたら、ファンドは困るよね?」
そうですね。ファンド・マネージャーは投資家の解約にも備える必要があります。なので、現金も準備しておかなくてはいけません。もしくは超短期の、金利のほとんど付かない債券(=価格変動リスクが非常にわずか)にも投資しておく必要があって、保有債券の平均利回りは恐ろしく低いのです。
また、次の疑問がわいてきます。
「組み入れている債券の発行体が破綻する可能性もあるよね?」
ポートフォリオの中の債券のすべてが高格付の発行体によるものでない限り、もちろんありえます。すべてがAAAだと利回りが低くなるので、リスクを取って格付けの低い発行体の債券もポートフォリオに組み入れたりします。もし1つでも破綻したら、影響は大です。
ファンド・マネージャーの宿命とはいえ、彼らがポートフォリオをすったもんだ入れ替えるのを見ていると、つい「お気の毒さま」という言葉をかけてあげたくなります。