茶道のもてなしに学ぶ
活性する企業コミュニティの秘訣
企業コミュニティを活性させるためには、企業が運営する「公式」の場と、利用者自身が運営する「非公式」の場の配置をバランスさせることも大切になってきます。
カゴメ株式会社の企業コミュニティは、参加者どうしが自由に交流しながら凛々子の苗を育てていく場ですが、それらの非公式の場を束ねるように公式の場が存在し、そこでは、害虫対策や苗がかかる病気の対処法などの情報交換が行われています。
また、収穫から次の苗を育てるまでの冬の期間は、公式の場で川柳大会などが開かれ、参加者の注目を集め、関心を維持する役割を担っています。
茶道のもてなしの心得に「相客吟味」という言葉があります。茶の湯の一席がどのような空気になるかは、そこに居合わせている客どうしの相性によるところが大きい。「どのような客を招待するかで、その茶会の良し悪しが決まるのだから、十分に気を配らないといけない」という意味だそうです。
企業コミュニティも同じで、どのような参加者を招き入れるかというのは重要なポイントとなります。
状況に応じてケースバイケースで対応することがほとんどですが、基本的にはファンから集めるのが最もつくりやすいです。企業コミュニティが価値観と価値観の共鳴の場であることを考えれば、それも当然といえるかもしれません。
企業コミュニティの設計はスーツの仕立てに似ている
私は各社のファンと接触の機会を持つなかで、つくづく会社というのは個性的であるということを感じるようになりました。一時期、全社共通のガイドラインの策定をめざしたこともありましたが、導入企業が100社を超えたあたりで、どの会社にも有効なしくみやガイドラインなど存在しないと痛感しました。
たとえば、当社は10社近くの化粧品メーカーのコミュニティをお手伝いしていますが、1社として同じ設計はありません。
伝統的なブランドで電話による接客を得意とする企業の顧客は、年配で受け身の方が多く、新進のベンチャー企業の顧客は、若く声高で自己主張が強い方が多い。むしろ同業界ほど、その個性の違いが強く現れるのではないかと思わされるほどです。
それらの違いによって、企業コミュニティの設計もそれぞれまったく異なったものになります。企業と顧客の関係はオリジナルなものであるから、コミュニティの設計もオリジナルなものになる。それはその人の骨格や雰囲気に合わせて仕立てるスーツのようなものです。