実際には帰社後の事務処理に2時間も3時間もかかり、退社するのはいつも午後9時、10時。ほとんど毎日、実質的に管理されながら10時間以上も働いているにもかかわらず「みなし労働だから残業代は払わない」としている会社が非常に多いのです。

「みなし労働」の協定を結んでいても、深夜労働や休日労働には割増賃金を払わなければなりませんが、これも「みなし労働」の名のもとにカットされているのが実情です。

職務手当と残業代はまったく別もの
「営業手当」があっても、残業代はもらえる

「職務手当」とは、基本給とは別に、会社が必要とする“特別な職務”に就く社員に支払う手当です。本来は、特別な技術や資格を必要とする職務に対して支払うものですが、営業などの事業所外勤務に就く社員にも「営業手当」といった名称で基本給以外に支給されている例が少なくありません。

 会社が「営業でずっと外歩きするのは大変だし、直行・直帰も認めている」という理由で営業手当を付加するのは何の問題もありませんし、社員にやさしい手当てといえるでしょう。

 ところが、「営業手当の中に残業手当が含まれているので、残業代は払わない」としている会社が多いのが実情です。つまり、残業代不払いの隠れミノともいえます。

 職務手当と残業手当は、まったく別のものです。職務手当はその職務に対して特別に支給されるもの、残業代は実際に働いた時間が所定労働時間もしくは法定労働時間を超えたときに割増しも含めて支払われるものです。

 ただし、給与規程に「職務手当の一部に定額の残業手当が含まれている」旨が明記され、なおかつその定額部分が実際に行った残業代の平均を上回っている場合は、一括の手当てにすることは可能です。

 しかし実情は、残業代部分の定額が示されていなかったり、示されていても実際の残業代を大きく下回っていたりするケースが少なくありません。本来は、下回っていたら、その差額を残業代として支払う必要があります。
 


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