9月27日、三菱重工の小牧南工場(愛知県豊山町)で航空自衛隊向け支援戦闘機「F-2」の最終号機の引き渡し式典が行われた。

 大宮英明社長自らも出席した式典の華やかさとは裏腹に、三菱重工関係者の心中は暗い雲に覆われていたのではないか。2000年の量産開始以来、累計94機を納入したF-2の最終号機引き渡しは、1956年から続いた戦闘機の国内生産が途絶えることを意味していたからだ。

 機体では三菱重工と川崎重工、富士重工、エンジンではIHI、電子機器では三菱電機など、戦闘機生産は日本を代表する企業が関わってきた。2010年度時点で製造金額の4割を防衛需要に依存する日本の航空機産業にとって、戦闘機の受注がなくなることは大きな痛手だ。生産に空白期間が生じれば先端技術の継承が難しくなるし、何より雇用や設備を維持することもできなくなる。

 なぜ、戦闘機の生産が途絶えてしまうのか。次期主力戦闘機(FX)の選定作業が大幅に遅れてしまったからだ。

最終候補3機種の一角、F-35ライトニング2
Photo:JIJI 提供:ロッキード社

 F-2最終号機が納入された前日、9月26日に海外の航空機メーカーなど3社がFXに関する提案書を防衛省に届け出た。これにより、米ボーイングの「FA-18スーパーホーネット」、米ロッキード・マーチンを中心に9ヵ国が共同開発中の「F-35ライトニング2」、そして英BAEシステムズなど欧州4社が開発した「ユーロファイター・タイフーン」が最終候補に絞られた。

 今後、防衛省内のプロジェクトチームが11月末をめどに3機種の中からFXを選定、防衛大臣、安全保障会議の承認を経て、12月中には閣議決定し、2012年度予算に関連経費が計上される見通しだ。

 だが、このプロセスは当初の予定より3~4年遅れている。そもそもFX計画は先の中期防衛力整備計画(2005~09年度)に現用の「F-4」の後継機として盛り込まれたもので、09年度には納入が始まっているはずのものだった。

 これが予定通り進まなかったのは、防衛省が世界最強の戦闘機といわれたロッキード・マーチンの「F-22」(ラプター)にこだわったため。最新鋭機の情報流出を恐れた米議会が反対したことで、F-22の調達は暗礁に乗り上げたのだが、それでも防衛省はあきらめず議会の承認を待ち続けた。「共和党政権が続いていれば承認される可能性もあった」と見る防衛関係者もいるが、ブッシュからオバマ大統領へ政権が移ると、米政府は非常に高価なF-22の生産中止を決定、ついに防衛省もあきらめざるを得なくなった。

 この時間的ロスが3~4年の選定作業の遅れと戦闘機の国内生産途絶につながったのである。