現代人の多くが実は「糖質中毒」である
――血糖値スパイクが引き起こす不快感
ところが、知的なはずのビジネスパーソンの多くが、飲む必要のない糖質たっぷりの飲料をとることで、朝から血糖値を盛大に上げています。
血糖値を上げるのは、ひとえに糖質です。脂質やタンパク質などは上げません。だから、バターで焼いた肉をたくさん食べても血糖値は上がらないし、血糖値が上がらないから太ることもありません。
一方、たった1本の飲み物が、血糖値を急激に上げ、肥満をつくり上げ健康を害してしまいます。そこには、大量の糖質が含まれているからです。
糖質は炭水化物と言い換えることができます。実際に、糖質たっぷりの清涼飲料水には「糖質〇グラム」ではなく「炭水化物〇グラム」と表記されているものがほとんどです。だから気づきにくいのです。
この糖質(≒炭水化物)は、ごはんやパン、麺類、果物、ケーキやせんべいといったお菓子、清涼飲料水など、ビジネスパーソンが普段から摂取しているさまざまな食べ物に含まれます。
こうした糖質を含む食べ物を摂取すれば、例外なく血糖値は上がりますが、上がり方はさまざまです。下の図0-3を見てください。
ごはんやパンなど固体のほうが血糖値の上昇が緩やかです。それは胃の中での消化に時間がかかるからです。ところが、液体の場合、あっというまに胃をすり抜けて小腸へ届き吸収されるために、一気に血糖値が上がるのです。健康な人の血糖値は、空腹時で80~90mg/dl(以下単位省略)前後です。そこでごはんやパンを含んだ食事をとれば、1時間後に120くらいまで上がり、やがてゆっくりと下降していきます。こうした緩やかなカーブならばいいのですが、液体で大量の糖質をとると、とんでもないことになります。
液体の糖質は口にしてすぐに血糖値が上がり始め、30分後にはピークに達してしまいます。缶コーヒーを1本飲めば、糖尿病のない健康な人でも30分後には血糖値が140くらいまで急上昇します。これを「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値スパイクが起きると、今度はジェットコースターのように一気に下降して、血糖値が低すぎる状態に陥ります。
このときに、体の中で起きている変化について簡単に説明しましょう。血糖値がぐんと上がると、セロトニンやドーパミンといった脳内物質が分泌されて、ハイな気分になります。だから、「仕事前に気合いを入れるには缶コーヒーがぴったりだ」と誤解してしまうわけです。この、ハイな気分になるところを「至福点」と言います。
一方で、血糖値が急激に上がったことを察知した体は、それを下げるために慌てて膵臓から大量のインスリンというホルモンを放出します。そして、血糖値が急激に下がります。
血糖値が大きく下がると、ハイな気分から一転、イライラしたり、吐き気や眠気に襲われたりと不快な症状が出ます。すると、「またあのハイな気分になりたい」とばかり、血糖値を上げる糖質が欲しくなり、同じことを繰り返してしまうのです。
これは、「糖質中毒」という脳がおかしくなってしまった非常に深刻な症状です。しかし、中毒に陥っている本人には、その自覚がまったくありません。
実は清涼飲料水などのメーカーは、人の至福点について計算し尽くし、商品を設計しています。言ってみれば、糖質中毒患者を増やすことで利益を得ているのです。知的なはずのビジネスパーソンが、それにまんまとはまってはいけません。
(この原稿は書籍『医者が教える食事術 最強の教科書――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)