菅野美穂さんの現場に立ち会って学んだ
「一流のお辞儀力=“つむじ理論”」

 2000年に、私は菅野美穂さんが出演するCM撮影に立会ったことがあります。すでに菅野さんは注目されていましたが、奢ることなく、とても謙虚に振る舞っていたのを覚えています。

 プロデューサーやカメラマン、監督、クライアントに挨拶をする芸能人は、たくさんいます。でも、菅野さんのように、アシスタントやケーブル持ち(撮影の見習い)にまで、「お願いします」「ありがとうございます」と、自分のつむじが相手に見えるほど、深々と頭を下げる人は、見たことがありません。

 しかも彼女のお辞儀には、あざとさがない。マネージャーに促され「計算ずくでお辞儀をしている」わけではなく、自分から率先して、すべての人に挨拶をしていたのです。

 すると、現場の雰囲気がよくなってきて、スタッフ全員の「この女性を応援したい」という気持ちが高まっていきました。浮き沈みが激しい芸能界において、彼女がいまも輝いていられるのは、美しさや演技力はもとより、まわりの人が「応援したい」と思わせる謙虚な気持ちを持っているからではないでしょうか。

なぜ、自分の「つむじ」を意識するとうまくいくのか

 私が大学4年のとき、就活指導の担当者から「面接のときは、深くお辞儀をしましょう。会釈よりも深く、そうですね……、30度くらいでしょうか」とか、「お辞儀のテンポは、1で曲げて、2で止めて、3、4で戻す」といったアドバイスを受けたことがあります。

 けれど私は戸惑いました。「深く」とか「30度」の加減がさっぱりわからなかったからです。どこまでが深いのか。どうすれば深くなるのか。

 考え抜いた先に出した結論は、単純明快。「頭のつむじを見せる」ことでした。

 「深い=つむじ。つむじを見せるくらい頭を下げれば、それはきっと深いだろう」と自分で定義づけをしたわけです。

 相手につむじを見せようとすれば、必然的に「深いお辞儀」になります。また、それだけ「相手よりも遅く起き上がる」ようになるため、お辞儀のテンポもゆっくりしてきます。

 人間は「自分よりも下の立場に身を置く人」や「自分を持ち上げてくれる人」に対して、好感を抱きます。ですから、「つむじを見せる=深いお辞儀をする」ことによって、「あなたを敬っている」という心情をわかりやすく示すことができます。

 私は四流大学卒ながら、就職活動では、「誰よりも深く、誰よりも遅くまで」お辞儀をし続け、高評価をいただくことができました。

 もちろんいまも、目上の方やキーマンと挨拶をするときは、「つむじ」を見せるようにお辞儀をしています。