株価や基準価額が下がったところで
心が折れてしまう人は多い(中野)

朝倉 中野さんはこの厳しい環境をどう思います?

中野 下がったところで心が折れてしまうという人は多いと思います。そこで止めてしまう。でも、大概の場合は、止めたところが大底というケースが多いので、その事実をきちっと考えるべきでしょう。
  積極的に投資すべきかどうかということですが、高度経済成長期の日本であれば、特に投資をする必要はありませんでした。預貯金に預けっぱなしにしておいても金利水準が高いのでどんどん利息が増えますし、何よりも自分の収入が経済成長に連動して増えていきましたから、定年まで働けば、ある程度の財産を作ることができました。でも、今はそうはいきません。だからこそ、投資を真剣に考える必要があると思います。
  もちろん投資にはリスクがありますが、世界経済の歴史を見ていくと、これまで右肩上がりの成長が続いてきました。それは、この地球で生活している人が皆、自分の子供、孫がより豊かな生活を送れるようにと願ってきたからです。その部分を腑に落とすことができれば、今のマーケットの低迷に惑わされることなく、投資を始めることができると思います。

司会のモーニングスター 朝倉智也氏

朝倉 若い方、年配の方によって投資の仕方が異なると思いますが、それぞれどういう形で投資に向き合っていけば良いのでしょうか。

竹川 長期的に資産形成を考えるうえで、押さえておきたい点が3つあります。ベースにはあくまでも公的年金や、企業の退職給付制度があり、それで足りない分を自助努力で作っていく。現役であればリタイヤに向けて、例えば積み立て投資などで足りない分を長期的にコツコツ作っていく。
  でもリタイヤ後は稼ぎ力が落ちるので、より保守的な運用を行うということを考えましょう。あとはいつまでに、どのくらいのお金が必要かという観点で、投資戦略を考える必要があります。実際に受け取る時期がいつかを見極め、安全資産に振る、あるいは株の比率を下げるというように安定資産中心にポートフォリオに替えていかないと、受け取る直前にマーケットが大きく下落して、受け取る額が減ることにもなりかねません。

加藤 年配の方は販売金融機関に頼って投資信託を購入する傾向がありますが、これは止めた方が良いでしょう。その時、販売金融機関が売りたいと思うものを販売する傾向があるからです。特に年配の方は、この点に留意しておく必要があります。

朝倉 中野さんのセゾン投信は販売金融機関を介さずに投資信託を販売していますが、そのメリットは何ですか?

中野 やはり販売会社に取られるコストが必要ないので、ローコストで運用できます。それと、投信会社から見るとお客様の顔を直接見ることができるので、お客様がどういう願いでそのお金を託してくれたのかが分かりますから、運用に対する志も変わってきます。

たまたま近くにあった金融機関へ行き
投資信託を買うのは手順が違う(竹川)

朝倉 販売金融機関との付き合い方はどうすれば良いのでしょうか。

ファイナンシャルジャーナリスト 竹川美奈子氏

竹川 そもそも販売会社から選ぶのではなく、自分自身のことを考えて、資産配分を決める、商品を決めるというところからアプローチする必要があります。
   ところが、実際に投資信託を購入している投資家を見ると、たまたま近くにあった金融機関に行って、そこで扱っている範囲から、投資信託をピックアップする傾向があります。これは、間違いです。まずは資産配分や商品などをしっかり決めたうえで、それを販売している金融機関を探すという手順で投資信託を購入するようにして下さい。