ベストセラー『投資信託にだまされるな!』著者のファイナンシャル・ジャーナリスト竹川美奈子氏をゲストに、セゾン投信代表取締役社長 中野晴啓氏、バンガード・インベストメンツ・ジャパン代表取締役 加藤隆氏の3名で、『簡単で有効な投資法とは?』をテーマに、10月9日にパネルディスカッションが行われました。
モデレーター(進行役)はモーニングスター代表取締役COO 朝倉智也氏が務め、4名の投資のプロが顔合わせし、今の時代の有効な投資法について、語っていただきました。(取材・文 鈴木雅光)
デフレの今、本当に投資は必要なのか?
朝倉 今、デフレで厳しい状況にあります。むしろ投資はしない方が良かったのではないか。貯蓄だけで良かったのではないかという意見もありますが、このデフレのなかで、それでも投資をする必要はあるのでしょうか。
加藤 貯蓄から投資へというスローガンが言われて10年くらいになりますが、最近はあまり聞かなくなりました。
ただ、この貯蓄から投資への「貯蓄」は、いささか誤解を招きがちな言葉です。なぜなら投資も貯蓄だからです。貯蓄には預金もあれば投資もある。つまり貯蓄と投資は本来、相反する言葉ではないのです。両方やればいいし、それが正しい貯蓄の方法だと思います。
また、預金は安全かというと、それは相対的なものです。景気が好調の時に預金で運用しても、株式に比べて殖え方は小さくなりますし、将来、高いインフレが到来した時、現預金にばかりで資産を固めていると、物価の上昇に対して資産価値が目減りしてしまうリスクがあります。
朝倉 中野さんはセゾン投信を始めて4年ですが、この間、投資家のマインドは変わりましたか?
中野 変わっている方もいるでしょうし、変わっていない方もいます。ただ、リーマンショックなどの金融危機を乗り越えてきたということは、ストレス耐性の強化につながっていると思います。
「下がるってこういうことなんだ!」ということが、日本の普通の生活者が実感できたということは、これからの経験値として得難い経験をしたと思います。この時期をしっかり生きてきたことは、必ず良いお金の流れを生み出すきっかけになると考えています。
朝倉 中立的なアドバイザーとして、今、この環境で投資は必要ですか?
竹川 特に若い世代であれば、預金100%で運用するのではなく、自分の老後生活資金を築くうえで、投資をするのは良いことだと思います。ただし、万一に備えるお金や使う予定のあるお金は、投資に充てるべきではありませんがー。
朝倉 今の厳しい環境でも積極的に運用するべきですか?
加藤 結局、自分の判断ですが、将来、どんどん下がるのか、それとも皆が危ないと思っている時が底なのかは、誰も判断できません。自分として非常に不安であれば、通常のポジションよりも防衛的にするのも一手ですが、足元のマーケットの状況に応じてポジションを変えるというのは、実はあまりよろしくない。判断を間違えることが多いからです。