さらに日本企業の現場レベルの話で言うと、発注者のITリテラシーが低いことも大きな問題です。日本では、IT担当者よりも営業担当者の方が力を持っていて、意見が通ってしまうケースが多い。知識のない宣伝部がある日突然、デジタル担当に任命される場合もあります。そうした担当者が社内のIT担当者やシステム会社などに仕事を発注するのですが、往々にしてリテラシーが低い。結果、発注者の無知により振り回されて無駄な工程や仕様が発生し、クレームをつけられては追加でタダ働きをさせられるわけです。

 この現象は、指示を出す側の知識が低い可能性が高いことが原因で、ITに限らずあらゆる仕事の根幹にある課題とも言えます。仕事の「発注者=リクエスター」に賢くなってもらわない限り、長時間労働が是正されることはないんです。

インドへのアウトソーシングが
日本の労働人口減少問題を救う

── 一方で、IT開発者側のエンジニア不足やスキルレベルの問題もあると思いますが、解決策はありますか。

 エンジニアのスキルを上げて生産性を向上するにはと考えたときに、私はクラウドソーシングでカバーしていくのが一つの答えだと考えています。

 今、弊社では、インド政府と協業してビジネスの拠点を作っています。インドは近年、経済成長を果たしているとはいえ、1日2ドル以下で暮らす貧困層がまだまだ多い国。一家がマッチ箱を作って生計を立てていたりします。そんな方々にパソコンを提供し、教育機会を設けて、プログラミングの発注をすればみんながハッピーになれると考えました。

 例えば、日本のエンジニアが避ける傾向にある単純なプログラミング作業を、インドの子どもたちにやってもらうんです。そうすることで、インドの方々は生活水準を上げることができ、かつ技術を学ぶことができますし、日本のエンジニアは仕事のモチベーションを下げることなく“上流”の仕事に注力できます。

 このように、生産性向上とは一つの国や地域、企業の効率を上げるということではなく、世界的に循環させながら底上げしていくことが必要だと思うんです。また、こうした循環は、国をあげて取り組むべきものだとも考えています。人口減少が避けられない日本において、労働力をいかに補うかは重要な課題です。しかし、移民を受け入れるということはハードルがとても高く、すぐに行動に移せるわけではない。