そこで、先ほど話した取り組みが生きてくるわけです。例えばインドで、職業訓練の学校を設立するための支援をします。インドは英語が公用語でITパワーもありますから、そこに仕事が回るプラットフォームを提供することで、ゆくゆくは日本とつながりのあるIT人材を育てることができます。日本に興味を持ってもらえれば、将来的に日本を就業先の一つとして考えてもくれるはずです。

 私は、「移民を受け入れない生産性向上」と呼んでいます。クラウドの仕組みを使えば、日本から単純な仕事を簡単に発注でき、かつ労働力を海外に確保することできます。つまり、日本の労働力人口減少にも対応できる仕組みなのです。

 米国で、プログラマーは人気職種です。一方、日本では、求人数が倍増していても応募数は半分という現象が起きており、プログラマー人気はまだまだ低い。不人気の理由は先述したように、IT部門の価値が低く見られているから。今の日本では、IT人材が17万人も不足していると言われていますが、今後は人口減少でますます不足しますから、このような取り組みは必須です。

 働き方改革といわれますが、生産性を上げるためには、国の売り上げを伸ばすことが必要です。みんなが豊かになるためには、ITの力は必要不可欠なものです。

ルーティン業務は世界に発注
日本人は得意の仕上げに特化

──しかし、世界に目を向けたときに、日本は世界のマーケットで戦えるのでしょうか。

 海外では、工程の70パーセントの段階で放り投げるなど、最後までやり切らないような国もあります。しかし日本人は違う。最後まできっちり仕上げるという部分に、日本人の良さが生きると考えています。そういう意味で、ルーティン業務は世界に発注し、日本人は要件定義(仕様決め)や仕上げの部分に特化すればいいわけです。部分最適を、全体の工程を見ながら行うイメージですね。

「Upwork」というアメリカ資本のクラウドソーシングサービスがあります。ここでは、例えばUberの初期開発に携わっていたような優秀なプログラマーと仕事をすることができます。しかも、日本よりも安価に仕事を請けているケースもある。そういう方が世界にたくさんいるわけでから、それを活用すればいい。英語のハードルを懸念する人がいますが、テキストベースでのやり取りは、Google翻訳などを使えば大抵のことは解決できる。しかし、こうした場合でも、発注者のリテラシーは求められています。

──最後に松岡さんが目指す未来像を聞かせてください。

「日本をどうにかしないと」という思いはずっと抱いています。かつて、日本へ鉄砲が伝来したときに、それを否定していつまでも刀で戦っていた人は、結局負けたんです。新しい技術が伝来したときに、使わないと死にます。そこで導入すると決断ができたかどうかは、伝来した技術を理解していたかどうかだと思うんです。

 ですからわれわれも、先端的なテクノロジーを導入することで生き延びていく。生産性向上は、その技術を使って得られる結果の一つです。耳当たりのいい働き方改革ではなく、テクノロジーの理解や駆使を前提にチャレンジをしていければ、必ず日本は浮上すると思います。

(記事提供:Qreator Agent)