ただ、投手力を前面に押し出すとは言っても、肝心なのは投手力と攻撃力の歯車がいかに噛み合うかということ。すなわち、投手陣と野手陣に相互信頼がなければならない。いくら投手が1点も取らないよう、いいピッチングをしても、打者が一人も打たなければ勝ちはない。その逆もしかり。
では、投手陣と野手陣の相互信頼はどうやって築いていくものだろうか。
監督になったつもりで考えてほしい。0対1の悔しい敗戦が3試合も続いた。ファンもメディアも「打てる選手がいない」と打線の低調ぶりを嘆いている。この状況から抜け出そうと、チームでミーティングをすることになった。監督であるあなたは、誰にどんなアドバイスをするか。
恐らく多くの方は、打撃コーチやスコアラーの分析結果も踏まえて、3試合で1点も取れない野手陣に効果的なアドバイスをしようと考えるだろう。技術的な問題点を指摘するか、「気合いを入れよう」と精神面に訴えるか。ソフトに語りかけるか、檄(げき)を飛ばすか。コミュニケートする方法も慎重に考えながら、何とか野手陣の奮起を促そうとするのではないか。
つまり、「0対1」の「0」を改善するという考え方だ。
私は違う。
投手陣を集め、こう言うだろう。
「打線が援護できないのに、なぜ点を取られるんだ。おまえたちが0点に抑えてくれれば、打てなくても0対0の引き分けになる。勝てない時は負けない努力をするんだ」