プロ野球界では、先発投手が6、7回を3点以内に抑えれば「仕事をした」と言われる。つまり、3失点以内で負ければ「打線が仕事をしていない」、3点以上奪っても負けると「投手が仕事をしていない」ということになる。投手戦、打撃戦の区別もここからきているのかもしれない。

 待ってほしい。

 勝負事も含めた仕事というのは〝生き物〟だ。経験に基づいたセオリーは尊重するとしても、一歩先では何が起こるか本当にわからない。

 ならば、打線が3点取れなくても勝てる道を見つけ、10点奪ったのに逆転負けしてしまうような展開だけは絶対に避けなければいけない。そうなると、「3失点以内なら投手は仕事をした」という考え方はできないと思う。投手には、あくまで打線の調子を踏まえた上で〝勝てる仕事〟をしてもらいたい。

 繰り返すが試合は「1点を守り抜くか、相手を『0』にすれば、負けない」のだ。

 また、得点できない野手を集めてミーティングをすると、呼ばれなかった投手陣は「俺たちは仕事をしているんだ」という気持ちになり、チームとしての敗戦を正面から受け止めなくなる。このあと、また同じような状況になっても、「悪いのは野手陣だろう」と考えてしまい、ここから投手陣と野手陣の相互信頼が失われていくものだ。