天才少年は「天賦の才」と「◯◯」で誕生した

 確かに、ウェイツキンには天賦の才がある。これだけのことを成し遂げられたのは、遺伝子のおかげでもあるだろう。

 だが、すべてがすぐれたDNAの成せる技だとは思えない。彼のすばらしい自伝『習得への情熱』(吉田俊太郎訳、みすず書房)を読めば、彼が心と体という、2つの異なる分野の頂にたどり着けた理由が明らかになる。

 それは、彼が自分の能力と野心を伸ばしたおかげ、すなわち持って生まれた能力を成長・発展させたおかげなのだ。ウェイツキン自身も、チェスと太極拳の両方で成功できたのは「負荷と休息のリズム」をつけたからでもあると語っている。

  ものすごい緊張状態のチェスの対局中に、対局時間が4、5時間ほど経過したところで席を立ち、
  会場の外を歩いたり、50ヤード全力疾走したり、6階まで駆け上がったりしたことは何度もあっ
  た。そうやってから、会場に戻り、顔を洗って完全にリフレッシュした状態でふたたびゲームに
  臨んでいたのだ。あの時から今日までずっと、ぼくの肉体トレーニングのほとんどすべてが、形
  こそ違うものの、ストレス・アンド・リカヴァリーのコンセプトに則ったものになっている。……
  パフォーマーとしての向上を本気で考えている人は、ストレス・アンド・リカヴァリーのリズムを
  生活のあらゆる側面に組み入れるのがお勧めだ。