「ゲームチェンジャー」だけが、明日の成功を手にできる

 ビジネスを成功させたいなら、リーダーは人と人との関係性に投資しなければならないのだ。だが、具体的にどうすればいいのか。給料をあげれば従業員はもっと効率的に働く気になるのか。安売りをすれば客の愛情を買えるのか。どちらも、そんな都合よくはいかないと私たちは知っている。人は、賃金が低ければ低いほど、意欲に燃えて献身的に働くことがある(慈善団体のボランティアなど)。そして忠誠心の強い顧客ほど、高い価格に進んで財布を開く(MacやiPhoneの愛用者など)。慈善団体やアップルのようなビジネスは、労働者や顧客の情熱をかきたて、活用し、低い労働コストや高い利益を実現する方法を心得ているのだ。

 同じ法則が、あらゆるビジネスに当てはまる。扱う商品がどんなに平凡であろうと、従業員や顧客との絆の強さは利益増大を引き出す力になる。だが、そうした関係性を育てるには、相手の真のモチベーションを理解するゲーム認識力が求められるのだ。隠れたプレイヤー、隠れた選択肢、隠れた連鎖関係を先読みできないせいで陥る落とし穴や、演じなくていいはずの失態も、ゲーム認識力があれば回避できる。戦争でゲーム認識を誤れば数千人の命が失われ、国家の運命すら塗り替えられるかもしれないが、ビジネスにおいてゲーム認識を誤る場合も、数百万ドルのコストが生じ、組織が大きく停滞することとなるかもしれない。

 軍の上層部にも、営利・非営利組織の経営陣にも、ゲーム認識力は間違いなく必要だ。より広義に言うならば、戦略的相互作用が大きな失敗または成功につながりうるすべての状況に、ゲーム認識力が必要だ。

 さらに言えば、おそらく学校と家庭にこそ、ゲーム認識力が必要だ。高いゲーム認識力があれば、逆境に負けない家族になる。戦略のあり方しだいで、未来は危機にあふれたものともなりうるし、反対に多くの機会をつかめる場所ともなりうる。ゲーム認識力があれば、そんな未来に向けて、子どもたちを備えさせてやることができる。ゲーム変革者(チェンジャー)こそが、未来に大きくはばたくのだ