科学的な知見に基づいた「英語の最短ルート」
かく言う僕自身、「子どもの英語教育」の世界に身を投じたのは、それほど昔のことではありません。日本に戻ってくる2012年まで、僕はアメリカ・コネティカット州にあるイェール大学で研究者をしていました。
日頃はもちろん英語“で”講義をしていましたが、決して英語“を”教えていたわけではありません。僕の専門は比較政治経済学。自分で言うのもヘンですが、英語教育とはほとんど(というか、まったく)無縁の世界に生きていました。
しかしおかげさまで、日本でゼロから立ち上げた中高生向けの英語塾は、わずか4年で累計3000人以上の生徒が通うまでになっています。
いまでは、オールイングリッシュで教育を行う幼稚園、小学1~6年生が対象のキッズクラスのほか、「国語」「算数」「プログラミング」「留学指導」といったカリキュラムも充実させています。
「そんな『素人』の塾がどうして人気に? 何か秘密があるの?」
よく聞かれるのですが、じつのところ、何も特別なことはしていません。
ただ、応用言語学や教育学、心理学、脳科学などの「科学的根拠」に沿った教授法、世界的に見れば・ごく当たり前のこと・を愚直に実践してきただけなのです。
公教育にしろ学習塾にしろ、この「常識」をしっかりと踏まえて授業をしているところは、驚くほどわずかしかありません。先生方一人ひとりの努力では解決できず、入試の仕組みを含め、現状維持の圧力が強いのです。
現に、この記事をお読みのお母さん・お父さん・教育関係者のうち、「私、英語を話せます!」と断言できる人は、ごくひと握りではないでしょうか?
外国語習得の王道から外れた指導を受けてきたわけですから、当然と言えば当然です。
一方、僕の塾に来た生徒たちは、たしかな英語力を身につけていきます。
この教え方は、少しの工夫さえあれば、ほぼどんな子にも(そして大人にも!)確実に効果が出ますし、特別なスキルや才能も必要ありません。
だからこそ、僕のような素人であっても、子どもたちの英語力を飛躍的に高め、数十人からはじめた教室を数千人規模にまで広げられたのだと思います。
イェール留学生ですら、日本人は英語が下手
「それにしても、なぜイェール大のポストを捨て、わざわざ日本で英語塾を?」
これは帰国して以来、何度も何度も受けてきた質問です。
10万部超のベストセラーになった拙著『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)にも事情は書いたのですが、同書を読んでいない方も多くいらっしゃると思いますので、もう一度説明させてください。
僕がいたイェール大学は、いわゆるアイヴィーリーグ校(Ivy League: アメリカ東部の名門私立8大学)の一つであり、世界トップクラスの高等教育機関として知られています。
イェールには世界中から、優秀な学生たちが次々と集まってきます。アジア圏で言えば、日本はもちろん、中国や韓国からの留学生もたくさんいました。
そんな彼らと研究をしたり、講義を通じてディスカッションをしたりしていると、どうしても気になることがありました。
それは「日本人留学生だけが圧倒的に英語ができない!」という事実です。
イェールの大学院に進学する学生のなかには、たとえば元・東大生だっています。しかし、そんな「エリート学生」ですら、いつまで経っても英語力が未熟なままなのです。
いったい、なぜ日本人留学生だけが、英語を話せないのでしょうか?