貧しくなければ、「貧乏」でもいい

三輪:そういう意味では、高野さんも「心の筋トレ」を積まれてきたのではないですか? 単身アメリカに渡り、さまざまなご経験をされたのでは? 「ジャップ」と言われながら、小さな子どもにトマトを投げつけられたこともあったそうですね。

高野:痛かったですね、さすがに。「この負荷はデカイぞ」と……。でも、私の場合は三輪さんのような使命感があったわけではありません。意識的に筋トレをしないと、力がつかないタイプだったんです。人見知りだし、人前で話すのも苦手だし、自分の弱さを自覚していたんですね。

三輪:いまの高野さんからは想像できません。人見知りだなんて。

高野:でも、振り返ってみると、「苦手なところ」にこそ、その人の本質があるような気がするんです。

三輪:どういうことですか?

高野:得意なものを伸ばしていくのは簡単ですけど、得意なことばかりやっていたら、「それを苦手にしている人」のことが見えないじゃないですか。苦手なことを克服できれば、「それを苦手にしている人」のことが見えてくるんですよ。

三輪:その考え方、おもしろいですね。

高野:ですから、仕事が思いどおりにいかないときは、「いまは筋トレをする期間だ」と思えばいいんです。「キツイ、キツイ」「嫌だ、嫌だ」と嘆くのではなく、「今日の負荷はデカかった」と自分を客観的に見るようにする。苦しんでいる自分を俯瞰してみる。会社や組織を批判するより、自分の力をつけるほうが先なんです。

三輪:「大変なのは嫌」と言って日本に戻ったのでは、何も解決しませんし。