今の仕事が本当にやりたい仕事どうかは、
ひとまず横に置く

 さて、ここまで私は2種類の仕事に関する考え方を提示した。

 1つは「職人マインド」で、あなたが世界に与えることができるものに焦点を当てている。もう1つは「願望マインド」で、世界があなたに与えることができるものを重要視している。

 職人マインドは明快だが、願望マインドは曖昧で解答不可能な問題にまみれている。

 職人マインドには解放感が伴う。仕事が自分にジャストフィットしているかどうかを気にかける自己中心的な考えは忘れ、代わりに、足元を見て自分の仕事をコツコツやろうじゃないか。職人マインドはあなたにそう呼びかける。あなたに素晴らしいキャリアを約束する義務は誰にもない。自分で築き上げるのだ。そしてその過程は生やさしいものじゃない、と。

 そういうわけで、私が提案したいルールの中心テーマがここにある。職人マインドは、指をくわえてうらやむものではなく、実行あるのみ、だということ。

 つまり私が提案するのは、自分の今の仕事が本当にやりたいことなのかはひとまず置いて、誰もが思わず注目してしまうくらいに、それをうまくやってみてはどうか、ということだ。その仕事が何であれ、真のパフォーマーがやるようにアプローチしてみるのだ。

 このようにマインドを変えて、私自身の探求はわくわくするほどに発展した。

 しかし、簡単に変われる人とそうでない人がいる。職人マインドをブログで紹介し始めたとき、読者の中には不快感を示す人もいた。彼らの反論のポイントは1つに集約されるので、先を続ける前にここに紹介しよう。

 ある読者はこう評している。

「若き天才ギタリスト、ジョーダンが他のことには見向きもせずに延々と練習するのを厭わないのは、それが彼のずっと求めていた自分が本当にやりたいことだからだ。ジョーダンは自分にピッタリ合った職を見つけたからなのだ」

 私はこの手の反応を何度も聞かされたので、これを「『やりたいこと』ありき論」と名づけることにした。要するに、職人マインドが適用できるのは、すでに自分の仕事が好きでたまらない人々のみだ、という考え方である。だから職人マインドは願望マインドの代わりにはならないと言うのだ。