多数の仏メディアで話題となった全仏ベストセラー!
世界22ヵ国で翻訳された猫に教わる人生指南書の日本語版『猫はためらわずにノンと言う』がこのたび遂に刊行された。
他人の目は気にせず、決して媚びず、欲しいものは欲しいと言い、プレッシャーに屈せず、エレガントで自信に満ち、ひとりでも平気……子猫の時に事故にあい、左前足を失くした猫ジギーが、そんなハンディキャップをものともせず、むしろ「それが何か?」と気にもかけずに振る舞う姿は、常に他人の目を気にして、何かに追い立てられ、せわしく動きまわっている人間たちに、自分らしく生きるために本当に必要なことは何かを伝える本書から、一部抜粋して紹介する。
猫を飼っている人、猫好きな人だけでなく、猫のように、そこにいるだけで自然と一目置かれる存在になりたい人にも役に立つ!
何気なく見ていた猫たちの日常の仕草には、猫だけが知る深い人生哲学が込められていた!明日から、猫を見る目が変わります。
猫が争いを避けるのには理由がある
(アニー・デュプレー/俳優)
猫は必要な時以外は争わない。
自分の縄張りを守ったり、隣の雌猫に寄ってくる恋敵に攻撃をしかけたりする時を除いて。
猫が徒党を組んでほかの群れをぶっ潰しに行くのを見たことがある?
縄張りの併合や油田をめぐって?軍曹の肩章をつけた大きな猫に指揮されて?あり得ない!
年をとるにつれて、猫はますます術策を練って、争わずに敵を逃亡させるようになる。
ジギーは自分の夜の縄張りによそ者の雄猫が入ってきた時に備えて、見事な作戦をもっていた。
脅威が近づいてきたのを察知すると、息をひそめてじっと待っている。
ある夜、低くうなる恐ろしい声が何度か聞こえたので外へ出てみると、猫が一匹、一目散に逃げていくのが見えた。
しかし、ジギーはいない。
呼んでみたが出てこない。
彼の作戦はいつもこうだった。
家の中からは見えない箇所、窓枠のツタの枝が垂れ下がった暗がりに身を隠して大声を出していたのだ(まじめな話、虎の声のようだった)。
自分の姿を見せることなく、敵を威嚇する。もし敵が周辺に留まっていたら、ただではすませないと知らせているのだ。
その作戦は大体うまくいった。
ジギーはじっと動かず、敵が縄張りの外に逃げていくのを確認し、そしてまた夜のパトロールをはじめるのだった。三本足なのにもかかわらず、宵闇にまぎれて策略や計略、偽装行為を武器としてみごと争いを回避したのだ。
猫はケンカ好きでも好戦的でもない。
誇り高い彼らは、自分の縄張りが侵されそうになる時以外は絶対に戦おうとはしない。
これは孫子の兵法で読んだ教えの一つと同じなのだが、ひょっとしたら孫子も紀元前500年の昔に猫から学んだのではないかと思う……。こういうことを今日最も「頭脳明晰」な将軍や司令官が知らないのは不幸なことだ。
猫は敵に出会うと賢く立ち回る。
それに比べて人間は、大昔から役に立たない軍拡競争を繰り返してきた。
まともに戦えば、双方ともに傷つく。
猫にはそれがわかっている。
必要のないケンカはよそう。
ケンカして
得する人なんていないから。