自分一人で文字だけで勝負することの魅力
──太田さんにとって小説家という顔はどういう意味を持つものでしょう?
太田 僕はもともとテレビ芸人で主戦場はテレビです。あとは舞台での漫才。テレビというのはあらゆる表現方法を使えるんですね。たとえば表情だとか、声のトーンだとか、演技、そして言葉。さらに音楽も使えるし、フルに表現方法を使える。つまり表現者としてとっても有利な場所でやっている。すると逆に、文字だけでどれだけ人を自分の世界に引き込めるかというのが刺激的で、非常に面白い挑戦だと感じますね。
テレビはやっぱり共同作業なので──そこがテレビのいいところなんですけど──ディレクター、作家、カメラマン、音声さんなどいろんな専門家が集まって一つの作品を作るわけです。その仕事スタイルもとっても楽しいんだけど、それとはまったく逆に文筆ってのは一人の世界ですからね。そういう意味での魅力があるし、小説家──まぁ小説家なんていったら村上春樹に怒られそうですけど──は、文字だけで、自分一人の力で勝負するという感じはありますね。とにかくなんといっても本が好きなんですよ。
──このように小説で発表するものとテレビでの発言の分け方みたいなものはあるんでしょうか?
太田 僕はテレビもラジオも書くのも好きなんです。それぞれのメディアで有利な伝え方があるんだなぁということに最近気づいてきました。でも自分の考えの基本はどのような表現の仕方をしても同じです。我々の仕事は視聴者なり読者なりを最終的には楽しくさせるという娯楽だと思うし、悲観的な気分にさせたくないというのがありますね。
──1作目と2作目では出版するときのドキドキ感が違ったそうですが?
太田 1作目は殴り込みにいくような勢いで、あまり臆病にはならなかったですね。2作目は余計なことを色々考えちゃいました。世間の反応というものを。過去の自分との比較も加わるし緊張しましたね。