「セルフメディケーション税制」は市販薬に限定した控除
従来からの医療費控除は、診察費や治療費はもちろんのこと、通院のための交通費(通常のタクシー代やガソリン代、駐車料金は除く)や治療目的の市販薬の購入代金など(うがい薬など予防目的のものは不可)、幅広い範囲を控除の対象としています。その一方で、正味の医療費が10万円(もしくは「総所得金額×5%」)を超えていないと利用できないのがネックでした。
今回導入された「セルフメディケーション税制」は、きちんと検診や予防接種などを受けていることを前提に、一部の市販薬の購入代金に対して所得控除を受けられるようにしたものです。対象は限定されていますが、以下のように少額でも控除対象となります。
●「セルフメディケーション税制」の概要
〈対象となる人〉
所得税や住民税を納めていて、以下のいずれかの健診や予防接種を受けている人。
・市町村や健保、国保などが実施する健康診断(人間ドッグ、各種健診や検診)
・予防接種(インフルエンザワクチンの予防接種など)
・定期健康診断(事業主検診)
・特定健康診査(いわゆるメタボ検診)または特定保健指導
・市町村が実施するがん検診
※検診や予防接種を受けていることが必要なのは、申告者本人のみです。生計を一にする親族については不要です。
〈適用条件と控除内容〉
申告者本人と生計を一にする親族がスイッチOTC医薬品(特定一般用医薬品)を、年間1万2000円超で購入した場合、超えた分の金額について、上限8万8000円まで総所得金額等から控除できる(=所得が減る分、所得税額が少なくなる)。
上記の「スイッチOTC医薬品」は、医療用薬品から転用された成分を含む、処方箋なしで買える市販薬のことです。頭痛薬や胃薬、湿布薬など多くの薬が該当し、パッケージには図のようなマークが印刷されています。ドラッグストアによっては、レシートの品目の頭に「★」などの印を付けて判別がつくようにしています。はっきりしない場合は厚生労働省のホームページで、商品名の一覧を確認できます。
では、「セルフメディケーション税制」によって、どれくらい税金が戻ってくるのでしょうか。スイッチOTC医薬品を年間4万8000円(1ヵ月あたり4000円)購入し、所得税20%、個人住民税10%だった場合、以下のようになります。
●セルフメディケーション税制の計算例
•所得税の減税額
(4万円8000円-1万2000円)×20%=7200円……(1)
•個人住民税(翌年度)の減税額
(4万円8000円-1万2000円)×個人住民税率10%=3600円……(2)
•減税効果(還付金)
(1)+(2)=1万800円