人材の「2:6:2の法則」
ビジネスの現場における従業員の能力について、古くから「2:6:2の法則」が言われています。どのような企業も、2割の「できる人」(ハイパフォーマー)、6割の「普通の人」、2割の仕事が「できない人」によって構成されているというものです。
そして、多くの企業では、2割のハイパフォーマーが全体の売り上げの8割を稼いでいると言われています。となれば、人材不足を嘆く人たちは、何としてもハイパフォーマーを採用したいと思うでしょう。
しかし、その発想を根本からひっくり返さない限り、悩みは解決しません。
その理由は大きく2つあります。
1つは、「2:6:2」という構成は興味深いことに、何か特別な力学でも働いているのか、どのようにシャッフルしても変わりません。仕事ができない2割を排除すると、これまで普通の人に属していた6割から、新たに2割のできない人が出現してしまうのです。
「すべての人員をハイパフォーマーで構成したい」という単純な願いは、いかなる有名企業でもかなわないということです。これは、プロ野球の巨人軍が有名選手を集めたからといって優勝できるわけではないことからも明らかでしょう。
だから、この「2:6:2」の構成をいじる、つまり「優秀な人ばかりを欲しがる」のは無駄。それよりも、全体の底上げを図ることを考えたほうがはるかに効率的です。
もう1つが、ハイパフォーマーの争奪戦はあまりにも競争の激しい世界だということです。
考えてもみてください。人材は、どうにもこうにも不足しています。どこの企業も血眼になって「できる人」を探しています。そうした状況で何とかハイパフォーマーを確保したところで、あなたの会社は安泰でしょうか。
優秀なハイパフォーマーほど、あなたの期待に反して独立したり、他社からヘッドハンティングされたりして出て行く可能性が高いのです。
実際に、公益財団法人日本生産性本部が毎年行っている「新入社員・秋の意識調査」では、「条件が良い会社があれば、さっさと移る方が得だ」と考える人が2016年には過去最高の54.6パーセントとなっています。
そんな若者の動向に一喜一憂しながら日々を送るより、今いる人たちに着目し、彼らにしっかり売り上げの作れる人になってもらいましょう。
「そんなことができるなら最初から苦労はしない」と反論されるかもしれません。しかし、「そんなことができるかどうか」について、真剣に取り組んできた経営者やマネジャーは実はほとんどいません。
おそらく、今日のような人材不足に悩んだことがなかったために、上位2割のハイパフォーマー以外の人とは本気で向き合ってこなかったのです。
これからは、6割の普通の人や2割のできない人を活用していかなくては、ビジネスは成り立ちません。彼らを戦力にできた企業だけが生き残ることになるでしょう。