もしそうした衝突が起きてしまうようであれば、感覚派の選手やコーチには、「縦の比較」のデータを示せば納得してもらえるのではないかと僕は思う。過去の自分との比較…この数値は伸びている、しかしこの数値は逆に下がっている、だからこういう練習を増やしましょう…そういう伝え方に変換すれば、職人的な感覚を持つ選手も事実として受け入れやすいのではないだろうか。

 しかし、「横の比較」で、他の選手のデータと比べた話をしてしまうと、アドバイスはなかなか心に届きづらくなると思う。実際、データがそのボールのすべてを表しているわけではないし、2人のピッチャーを比較して、数値的に優れているほうが必ずしも結果を残すというわけでもない。実際の投球では、データ以外の要素も結果を大きく左右するからだ。

 だから僕は感覚派の選手を否定したりはしない。プロ野球のグラウンドでは、コンマ数秒の瞬間的な動作や、数ミリの違いによって勝敗が分かれる感覚的なプレーが繰り広げられている。数字として羅列されたデータだけを眺め続けていても、決していいボールを投げられるわけではない。ただ、その感覚的な勝負を少しでも有利に進めるために、僕はデータの力を借りるのだ。データには間違いなく、その力があると信じている。

 データを上手に利用できる能力。これからの野球選手はその面でも評価されるようになっていってほしい。

(次回は3/20掲載予定)