東日本大震災の復興支援活動で、糸井重里氏も驚くほどの成果をあげている一人の学者がいる。西條剛央(37)。ボランティア経験なしの早大大学院(MBA)専任講師で、「ふんばろう東日本支援プロジェクト」代表だ。
Amazonの「ほしい物リスト」を援用し、2万4000個の物資を被災地へ届けたり、「重機免許取得プロジェクト」で計200人以上の免許取得者を出したりと、誰も思いつかないアイディアを実行。行政や日本赤十字社もできない支援の仕組みに注目が集まっている。
猪瀬直樹東京都副知事、柿沢未途衆議院議員から、GACKT氏、宮本亜門氏、市村正親氏、大竹しのぶ氏、木村佳乃氏、佐藤隆太氏、成宮寛貴氏、藤原紀香 氏、別所哲也氏、松田美由紀氏、南果歩氏、森公美子氏、森山未來氏など、事務所の垣根を越え、有名人からも続々支援の手が差し伸べられているのはなぜか。話題となっている『人を助けるすんごい仕組み』を発刊したばかりの著者に、「組織心理学を活かした支援のあり方」について聞いてみた。
――西條先生は、早稲田大学大学院のMBA課程で教えているんですよね?
西條 はい。全日制と夜間制MBAで「組織心理学」「組織と哲学」「質的研究方法」などの授業を持っています。
――私も受けてみたいです。人数は何人くらいなんでしょうか?
西條 早稲田のMBAは少数主義なので10~30人くらいですが、僕の授業の中で一番人数が多いのが「組織心理学」です。
――「組織心理学」、面白そうですね。
西條 「組織行動論」ともいいますが、組織における人間心理を扱う学問です。あらゆる組織は人間でできていて、人間は「心」で動きますから、とても役立つものなんです。海外では非常に重視されていますが、日本の大学のMBAではまだあまり広まっていない、これからの分野といえるかもしれません。
――どんなふうに役に立つんでしょうか?
西條 「心理学」というと、よく人の心がわかるんですか、とかいわれますが、そういうものではないんです(笑)。ただ、いろいろな心的事象の“本質的な構造”みたいなことがわかると、理解できない意味不明の出来事も、なぜ起きるのか理解できるようになりますし、理解できるようになると、対処できるようになったり、予測できるようになったりする、ということはあります。
――それはぜひ聞いてみたいです。
西條 学生の希望に合わせて変更したりしますが、僕は「組織はなぜ腐敗するのか?」「組織の不合理はなぜ起こるのか?」というテーマを通しながら進めています。
――前回の連載のテーマと通じるものがありますね。
西條 はい。なぜ組織が腐敗するのか、その「構造」がわかれば、単に理不尽で意味のわからなかった不合理な出来事が、なぜ起きてしまうのか理解できるようになって、それに対処できる可能性も生まれます。
MBAは成功するための方法を教えますし、それはもちろん非常に重要なことなのですが、大失敗しないためには、なぜ人は普通考えたらありえないような失敗をしてしまうのか、といったこともきちんと理解しておく必要があるんです。
――最近、話題になっているワタミさんじゃないですが……。