小さく考える環境と構造を創る

多くのスタートアップが同じような失敗をしている。

例えば、僕のところにやって来たある台湾企業は、すべてのスマート機器を解錠できるような単一のアプリを作ろうとしていた。

スマート自転車の鍵から自動車、自宅、引き出しなど、すべてを解錠できるアプリだ。

課金モデルは無理だと諦め、アプリを無料にして、アプリ内でソーシャル・ネットワークを築こうとした。

自動車メーカーからIoT機器メーカーまで、あらゆる企業とパートナーを組むことを狙っていた。

さらに複雑なことに、このアプリで解錠するには、スマート機器に特殊な仕様が必要だった。

そんなやり方で、これほど大規模で複雑なものを軌道に乗せるのは、はなから不可能だった。

僕は単刀直入に、こう言った。

「小さく考えたほうがいい。君たちのアプリを高く評価してくれる顧客を1社選んで、そこに力を注ぐべきだ」と。

安全に価値を置く企業を狙って、セキュリティのソリューションを売り込むことを勧めた。

社内のドア、机、ファイル棚、倉庫といった重要なアクセスポイントを、単一のスマホアプリで制御できるようにするのがいい。

スマートロックの数に従って課金できるし、付加価値のあるサービスを提供することもできる。

元の計画よりそのほうがはるかにシンプルで、狙う顧客も1種類に限られ、はっきりとした収益モデルもできる。

このピボット(方向転換)が成功するかどうかはまだわからないが、僕は期待している。

3人のスタートアップでも、3万人の多国籍企業でも、イノベーションのプロセスはほぼ同じだ。

チームが小さく考えられるような環境と構造を創り出さなければならない。