新刊『借りたら返すな! いちばん得する!儲かる会社に変わるお金の借り方・残し方』では、1000件以上の財務戦略を立案してきた著者による「お金の調達力」を上げるための方法を紹介しています。本書から、「お金と会社の関係」「銀行との正しい付き合い方」「節税対策のウソ・ホント」「お金で困っている企業が意外と知らない対策」「企業再生で成功したノウハウ」などを公開します。
なんのために節税するのか? 節税しないほうがお金は残る
生命保険のほかに、決算前になると、税理士さんに「利益が出すぎているから何か買うものはないですか? 今期中に買ったほうが税金は安くなりますよ」といったアドバイスを受けることもあると思います。
はっきり言って無理やり考えて買うものなんてほとんどがいらないものです。必要ならそのときに買っているはずです。いずれ使うからといって、消耗品を大量に買ったとしても無駄遣いしてしまったり、経年劣化したりしてしまいます。
そもそも今期買っても来期買っても同じです。今期買ったら今期の税金が減り、来期買ったら来期の税金が減るだけです。
経営者が「節税したい」というのと、税理士が提案する「節税」には大きなズレがあります。
経営者が「節税したい」というのは、税金を払うとお金が減ってもったいない気がするから、なんとか「お金を残したい」という意味ですよね?
一方、税理士はお金の専門家ではありませんから「税金さえ減ればいい」という観点からお金が減ることに注目せず、とにかく税金を減らす提案をするのです。
生命保険もいらないものを買わされるのもお金が減ります。減ったお金以上に税金は減りません。経費になったお金の35%程度しか税金は安くなりませんから。つまり、税理士に節税を依頼すると、「お金が減る」のです。
節税している経営者の中で、「いくら節税できたか?」を明確に答えられる人はほとんどいません。
「なんとなくいろいろ対策したから減っただろう」という感覚だと思います。そして、気づいてないのは、それ以上にお金が減っているという事実です。
また、節税して利益を下げたがゆえに、銀行からの支援が減る可能性があることにはもっと気づいていないでしょう。
そもそも節税といっても、ほとんどは「課税の繰り延べ」です。今は税金が安くなっても、将来どこかで税金を払うことになります。
たとえば、航空機リースで今期1億円を経費にできたとしても、5年後にお金が戻ってくるときには利益になるので納税しなければいけないのです。納税したくなければ、また航空機リースに投資しなければならなくなり、負のスパイラルに陥ることになってしまいます。
基本的なことですが、法人税を払った後の利益だけが会社に残ります。
税金を払わなければ、会社に利益は残らないのです。
会社に利益が残らないと銀行も応援してくれません。つまり、調達力が上がっていかないのです。
そうすると、いつまでたっても現預金を増やすことができず、資金繰りが苦しい状態が続くでしょう。節税せず、堂々と税金を払えば強い財務状態がつくれるのに、なぜ節税するのでしょうか。
それでもどうしても税金を払いたくないと思う経営者は、株主の立場として考えてみてください。節税すると会社に利益が残らないので会社の株価が下がるのです。意図的に株価を下げたい場合は別ですが、ご自身の資産価値を悪化させて何かいいことがあるのでしょうか。
無駄な節税はせず、銀行に応援してもらい現預金を厚くして、儲けていきましょう。節税するために会社をつくったわけではないはずです。
■参考文献
儲かる会社に変えるたった1つの方法