ニューズピックスが創造したもの、取り除いたもの

ニューズピックスが制作するオリジナル記事
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 ニューズピックスのサービス全体を見ると、新しい価値を創造しつつも、重要でないと判断した要素を、上手く取り除いている。この戦略のメリハリがブルー・オーシャンを切り開く企業の特徴でもある

 例えば、既存のキュレーションメディアは、オリジナルコンテンツをほとんど制作していないが、ニューズピックスでは、佐々木編集長や既存メディアから転職した記者達が、オリジナルコンテンツを制作している。とりわけ、テクノロジーやスタートアップなど、新しい経済の動きを強く意識したオリジナルコンテンツに注力した。

 一方、速報性を重視するストレートニュースは一切作成していない。新聞など既存大手メディアが全国各地に支局を設け千人規模で記者を抱えるが、同社は東京一カ所に記者・編集者が集結し、その人数は約20人と圧倒的に少ない。そのため、競合が多いストレートニュースや夜討ち朝駆けが必要なスクープでは勝負せず、記者の人数とコストを抑えている。

 くわえてニューズピックスのみが提供できている価値もある。読者がニューズピックスだからこそ得られている喜びの一つは、ユーザー自らがニュース記事に対してコメントを残し、ニュースに参加できることにある。他のメディアにもコメント欄はあるが、あくまで記事の付属としての設計になっている。一方、ニューズピックスはコメントのほうが目立つUI(ユーザーインターフェイス)を構築し、読者を主役に置くようにした。

 専門家ならではの役立つコメントや、面白いコメントには、「Likes」ボタンで反応を残せる機能がある。そのため、有名人から反応がもらえたり、より多くの反応を集めたりすることで、利用者の承認欲求を満たす側面もある。

ニューズピックスの未来

 現在、ニューズピックスは“経済を、もっとおもしろく”をコンセプトに、個人ユーザーには従来より圧倒的に低い価格設定で、ニュースの速報性ではなく解釈の深さ、経済ニュースを通じたコミュニティの構築、自己承認欲求の充足という新しい価値を提供している。今後は経済メディアに限らず、ビジネススクールの要素を兼ね備えた「ビジネス情報コミュニティ」の形成を企図して、さらなるブルー・オーシャン・シフトの機会を創造しようと考えている。

※本ケースは書籍『ブルー・オーシャン・シフト』に掲載されたものを抜粋・再編集したものです。ロングバージョンは、書籍をご覧ください。