シンギュラリティは
「起きる、起きない」ではない!
「起こす、起こさない」である

 私見ですが、「シンギュラリティは起きるか、起きないか」ではなく、「起こすか、起こさないか」の問題だと思っています。

 実際に、AIの開発者であれば、ほぼ100%が「シンギュラリティは起きる」と思っているはずです。そう思っていなければ、そもそもAIの開発者は目指さないか、途中で脱落しているでしょう。

 ちなみに、拙著『マルチナ、永遠のAI。』で、富士山の麓で仙人のように暮らしている田淵慎吾(たぶち・しんご)が「シンギュラリティは起きる」と断言しているのは、彼が天才的なAIの開発者だからです。

 しかし、AIの開発者ではない主人公の岩科正真(いわしな・しょうま)は、田淵の自信がどこから来るものなのか、さっぱり理解ができません。

 繰り返しますが、「シンギュラリティは起きるか、起きないか」ではなく、「起こすか、起こさないか」の問題だと思います。

 そして、私たちはこの問題をもはや避けて通ることはできません。

 シンギュラリティについては、本連載でも今後も取り上げたいと考えています。

 さて、この不気味な会話をした『ボブ』と『アリス』の技術を支えているのは、「ディープラーニング」と呼ばれる自己学習の仕組みです。

 そして、AIはディープラーニングをする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。すなわち、りんなは子どものAIということになります。

 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービスに同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです。