おばあちゃんっ子だった
志麻さん

緑子:「ぜひ!志麻ちゃんは、おばあちゃん大好きでしたから。私たちが一緒に働いていた時の1年目に、志麻ちゃんのおばあちゃんが亡くなられたんです。
 それまでどんな大変な状況でも、淡々と仕事に打ち込んでいた志麻ちゃんが、崩れる感じがしました。私も同じ経験があったので、『志麻ちゃん、おばあちゃんと、さよなら言ってきたほうがいいよ』と言ったんです。
 お休みなんてとれないような職場でしたが、シェフも快く、
『行ってこい、行ってこい』と送り出してくれて、泣きじゃくりながら、帰省していったと思います。
 でも、戻ってきたときには、凜としたプロの顔に切り替えていました」

編集:「ジーンときますね。涙が出ます。実は、私、志麻さんの取材を重ねる中で、志麻さんのおばあさまのことがずっと気になっていました。
 今の志麻さんの思想に、おばあさまは、すごく影響を与えているのではないかと。だからこそ、志麻さんの処女作『志麻さんのプレミアムな作りおき』の『はじめに』に、私はどうしても、おばあちゃんのことを書いていただきたい、と、志麻さんに強くお願いしたいんです。この本はただ単にレシピを紹介する本ではない。志麻さんの想いと人間性を閉じ込めたい。そのためには、今の志麻さんの味になった原点。それを書いていただきたかった。その結果、処女作の4ページ最終行の記述、『私の料理の原点は、祖母と母にあります。両親が共働きだったため、私は母方の祖母と多くの時間を過ごしました。祖母は質素な暮らしの中で、庭の花をいけたり、自分で収穫した野菜で料理したりしていました。その姿に、私は幼心にも豊かなものを感じていました』となりました。今回、矢島さんにお会いして、志麻さんとおばあさまのエピソードを聞き、霧が晴れた思いがしました。ありがとうございます!!」

緑子:「こちらこそ、素敵な本をありがとうございます。志麻ちゃん、言っていました。『沸騰ワード10』を見た熱い編集者が、料理経験もレシピ本編集経験もないのに、長文のメールを送ってきて、初めての本をお願いすることにした、と。あれは発売前でしたが、相当ワクワクしていましたよ。寺田さんの熱意がきっと伝わったんでしょうね」

編集:「そうおっしゃっていただくと本当に嬉しいです。右も左もわからない編集歴20年のレシピ本若葉マーク男に、処女作を任せていただくという志麻さんの大胆な勇気とご英断に心から感謝しています。さらにさらに一人でも多くの方に手にとっていただくよう、全力を尽くして、私の生涯を賭けて売らせていただきたいと思っています」

緑子:「期待しています」

編集:「本日は長時間、心の琴線に触れるお話をありがとうございました。麻布・れとろさんも、本当に素敵なお店ですね。今度はプライベートで、静かなひとときを、優雅に刻む空間ですごしたいです。これほど素敵なスポットが、麻布十番駅近くにあるとは知りませんでした。ありがとうございました!」

緑子:「ぜひいらしてください。こちらこそありがとうございました!」

 彩りあざやかで、冷蔵庫の少ない食材でできる志麻さん「プレミアムレシピ」の数々は、連載第1回を、ぜひご覧いただければと思います。