取締役会には会社の未来が映っている

村上:でも、今話してるのって、本質的ですごく難しい問題ですよ。取締役の人選のロジック自体を企業の成長フェーズとかその時置かれているシチュエーションとか、いろんなことによって、本当は微修正しないといけないんだけど、それを議論する場がなかなかない。
攻めと守りのガバナンスのバランスを誰がどうやって決めんねんっていう。

小林:執行の功労報償的な位置づけとして、これまで成果をあげた人を中心にしていくのか。それとも、色々と指摘してくる口うるさい人を入れていくのか。その辺のスタンスは、会社の考え方がくっきり表れる部分やと思う。
孫さんは、自分と対等に戦えそうな口うるさい系の人を入れていくというスタンス。確か、シスコの社外取締役をやった時に、めちゃくちゃびっくりしたっていう原体験があって、取締役会で真剣勝負するっていうのが孫さんのスタイルになったと聞いたんですけど、社外取締役の人選にもそれが明確に表れていますよね。

村上:やっぱり、執行の仕事に対するご褒美としての取締役だと、遅効性があって、取締役が過去に成功した人ばかりになってしまう。本当は未来指向で、次の事業の戦略の先を見据えて、ボードを構成すべきなんですよね。
これからグローバル化したいから外国人を入れようとすると、「うちグローバルカンパニーじゃないのに、なんで外国人がボードに入るんですか」って話に最初はなるんだけれど、実はそれによって組織が変わりうる。「取締役を変えただけで何が変わんねん」って思うかもしれないけど、多くの企業でその変化の大きさを目の当たりにしてきたから、私はそのインパクトはすごく大きいと感じています。未来指向で取締役の構成を組めるかは、企業の成長における、1つの試金石かもしれない。

小林:イケてる企業があって、またもやコニカミノルタの話なんやけど、コニカミノルタでは、会社が今抱えているイシューを考えて、その都度、取締役の人選を考え直しているそうです。そのイシューを踏まえて、先回りして候補者の方々と交渉に入っているそうですね。

村上:そういう意味では、社外取締役を依頼する際に、社長は取締役候補の方を説得しないといけなくなるので、必然的に、会社としての課題感のアジェンダが必要になるわけです。
たとえば、以前、日立製作所の社長だった中西(宏明)さんが社外取締役に3Mとか立派な海外企業の経営者の方を引っ張って来られた時なども、「なんで日本の社外取をやらなあかんねん」ってなるところを、「いや、うちは今、こういう課題があって、こういう会社になりたいから、あなたの知見が必要なんです」という話をされないと、説得できなかったはずなんです。未来志向のアジェンダは常に持っておく必要があると思うんです。

*次回に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2018年1月1日に掲載された内容です。

渋谷系スタートアップと大手町系大企業。取締役会の違い朝倉祐介 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。


渋谷系スタートアップと大手町系大企業。取締役会の違い村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。


渋谷系スタートアップと大手町系大企業。取締役会の違い小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。