ちきりん  私がビジネススクールに通っていた頃ですね。当時、半導体といえば日本が圧倒的に強くて、シリコンバレーの半導体問屋のビジネスマンは日本の半導体メーカーと取引をするため、裏側に日本語が書かれた名刺をもって駆け回っていました。その頃、アメリカ経済は本当に調子が悪くて、反対に日本は絶好調、今とは全然違う時代でした。

竹内  ちきりんさんって、技術的なバックグランドもあるんですか。

ちきりん  いえ、全然ありません。大学を出てからずっといわゆる文系の仕事をしていました。いまは「働かない生活」を謳歌とか、ふざけたことを言ってます(笑)。

 花粉症がひどいし、今年はすごく寒かったので、2月にセブ島に行ってたんですよ。その時、ビーチに持っていく本を4冊くらい選んだなかに竹内先生の本があったんです。ビーチで読んでいたら、「これはすごくおもしろい!」と1日で読んでしまいました。背中に日焼け止めを塗るのを忘れて読んだので、やけどして夜に38度の熱が出てたいへんな目にあいました(笑)。

竹内  そんなことがあったんですか、それはすみませんでした。でも、本を誉めていただいてありがとうございます。この本、幻冬舎さんから1月に出たんですが、最初はあまり売れなくて……。担当者も社長や営業からさんざん責められていたそうで。ところが、ちきりんさんのブログで本をバーンと誉めてくださったら、一気に売れて本屋さんから消えてしまい、大急ぎで増刷したんです。いまでは4刷までいきました。

ちきりん  本って難しいですよね。いい本を書いても読んでもらえるとは限らないし。でも2月末くらいから売れ始めたと聞きましたけど。

竹内  エルピーダの倒産(2月27日)のときですね。結果的に本が売れました。私はエルピーダを擁護する発言をしているんですが、実は債権者でもあったのです。

ちきりん  そうなんだ。エルピーダって、いちばん大きな債権者は誰なんですか。

竹内  やっぱりエルピーダに製造装置を納めている会社でしょうね。なかには数十億円の売掛があるメーカーもあると聞いています。不思議なことに、金融関係者はきれいにすり抜けているところもある。先日、外資系の金融機関の人にも聞いてみましたが、大丈夫だと言ってました。金融機関はちゃんと逃げきってたところもあるんです。結局、メーカーが潰れて苦しくなるのは、やっぱりメーカーなんですかね。

ちきりん  竹内先生は44、45歳ですよね。アメリカだったら大企業でも社長になっていて全然おかしくない年齢です。いまも東芝に残っていれば、もしかしたら役員になっていたかも?

竹内  実は、私は東芝の社長になりたいと思っていたんですよ。ですから、技術だけをやるのではなく、MBAにも行ってマネジメントも勉強していたんです。けれども、内部から会社を変えていくのはとても難しいことだと悟ったんです。