“ライスレディ”と
マイコン炊飯器革命

 この手間をなくしたのが、マイコン炊飯器です。

 私が20代のとき、パナソニック(旧松下電器産業)の炊飯器開発チームの講演を聞いたことがあります。

「20人の女子職員にひとり2台ずつお釜を渡し、1日4回、全員がごはんを炊く。
 すると、ひとり8台分、20人でお釜160台分のごはんが炊き上がる。

 この作業を半年間繰り返し、色、粘り、甘み、艶といった定性的なデータ(主観的なデータ)を分析して、『最もおいしいごはん』を数値化した。
 その結果、スイッチを押すだけで、誰が炊いてもおいしくごはんが炊けるようになった」

 という趣旨でしたが、パナソニックには、現在も、「ライスレディ」という女性だけの炊飯器調理ソフト開発チームがあります。

 彼女たちは、「はじめチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いてもフタとるな」を科学的に分析する専門家集団です。

 日々ごはんを炊き、試食しながら、炊き方のプログラムをつくっています。

「炊飯器1機種につき、約3トンのごはんを炊いて、そのデータを綿密に分析する」
「ひとりが炊飯器を2台抱えて、1日に5、6回炊くので1日3合は軽く試食する」

 ということです。

 そして、色、粘り、甘み、艶、口の中でのほぐれ具合、冷めたときのおいしさなど、数値で表せない要素まで定量化して、プログラムに落とし込んでいます。

 マイコン炊飯器が登場したことで、主婦は「ごはんを炊く」というルーティン作業に時間を取られることがなくなりました。

 マイコン炊飯器の登場は、主婦のライフスタイルを変えるほど、画期的だったのです。

 今回、年間2000人の見学者が訪れる、鉄工所なのに鉄工所らしくない「HILLTOP」の本社屋や工場、社内の雰囲気を初めて公開しました。ピンクの本社屋、オレンジのエレベータ、カフェテリア風の社員食堂など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事をご覧いただければと思います。