カルチャー変革は何をもたらすのか

 マイクロソフトの変革がうまくいった背景にあるのが、まずはカルチャーの変革に成功したことだろう。だが、カルチャーを変えることは簡単なことではない。一体どんなことをしたのか。

 マイクロソフトのカルチャー変革は、グロースマインドセットをキーワードに、第3回で触れた3つの項目で推し進められている。

[1]Customer obsessed(常にお客さまのことを第一に考える)
[2]Diversity and Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)
[3]One Microsoft(ワン・マイクロソフト)

 アメリカ本社でダイバーシティ推進を担っているトム・フィリップス氏は、そんなカルチャー変革推進の一翼を担ってきた人物だ。

「カルチャーの役割は、極めて重要です。サティアはCEOになってから、自分たちの心を再発見しろ、というチャレンジを我々に求めました。製品や技術も構築し、お客さまに買っていただいて利益も上がっていた、成功している会社でした。しかし、将来を決めるのは、我々を取り巻く世界にイノベーションを提供できるかどうかなんです。ですから、成長を育み、イノベーションを育むカルチャーが必要でした」

 カルチャー変革は何をもたらすのか。フィリップス氏は端的に語る。

「例えば、世界を違った視点で見ることができます。そうなれば、我々の本当のポテンシャルが引き出せるかもしれない。また、コラボレーションやパートナーシップが社内でも社外でも生み出せれば、イノベーションのチャンスは増えます。お客さまの声にもっと耳を傾けた上で製品を作っていく、というのもカルチャーがあってこそです。過去には、お客さまに製品を渡して『いかがですか?』と、とにかく聞いていた時代がありました。そうではなくて、今はどんなソリューションをお客さまと作れるか、どんな問題を解決できるか、協業していく意識が強いんです」

 フィリップス氏は、カルチャー変革は12万人の従業員の成長のためのエンジン燃料になっていると語る。

「社員はカルチャーの変化を感じています。そして、毎日を過ごしています。一人ひとりがカルチャーを体現しているんですね。実際には、皆が皆、そうではないかもしれません。多くの社員がいるからです。しかし、CEOから始まった変革は、次々と組織に浸透していっています。だから、社員同士がやりとりしていると、カルチャーが変化していることがわかります」

 さまざまな取り組みを進めるなかで、とりわけ重要だと感じているのは、先にティム・オブライエン氏も語っていた、学習、成長を育むカルチャーだという。フィリップス氏は続ける。