コンピュータのマウスやインターネットのURL、ロボット手術システム「ダ・ヴィンチ」など、数々のイノベーションを生み出してきた、世界最高峰の研究機関SRIインターナショナル。彼らは、なぜ立て続けにイノベーションを起こせるのか? 試行錯誤を経ながら体得された、イノベーションを生み出す方法論「5つの原則」を単行本にまとめた同社CEOのカーティス・R・カールソン氏に、イノベーションとは何か、またそれを生み出す組織はいかに作れるのか、を聞いた。
Q.この本を書こうと思い立ったきっかけは?
まずはSRI社内にいた約2000人に、イノベーションを生み出すプロセスについてよりクリアに理解してもらいたいと思ったからだ。自分のこれまでの経験を、自身のなかで整理したいという気持ちもあった。それが結果的には、優秀なビジネス書(07年米ビジネス・ウィーク誌により、同年発行された1万冊以上のビジネス書からトップ10に選ばれた)として、広く支持される結果につながるとは当初は思っていなかった。
Q.アメリカのビジネスマンに対し、どのような点が一番響いたのでしょう?
おそらく、この「5つの原則」というコンセプトのシンプルさや本質を突いた点が、広く共感を呼んだ理由ではないだろうか。また、実践的ですぐに使えることもよかったのだと思う。
Q.そもそもイノベーションとは何か、という基本から伺えますか。
少し前置きを話すと、ご存じのとおり、グローバル競争はますます激化し、テクノロジーの進化も指数関数的に発展している。ヘルスケア、エネルギー、メディアなどの分野が典型的だが、たとえばインターネットは全く新しいコミュニケーションを生み出した。携帯端末、教育、すべてが変化しており、市場規模も巨大だ。
日本や米国は、他国が自国市場を席巻することを心配しているが、本当のマーケットは自国の外にある。しかしながら、こうしたチャンスをつかむにはイノベーションが欠かせない。今まで以上に、もっと素晴らしいイノベーションを起こす必要がある。
そこで、イノベーションとは何か? それは、「新しい顧客価値を創出して市場にもたらし、それを持続可能なビジネスモデルという形で示していくこと」だと考えている。
イノベーションは、さまざまな形で実現できる。たとえば、商品開発や物流面の改善、開発途上国が発展する足がかりとなったマイクロクレジットのような概念や仕組みも含まれる。