爆発パターン1
規模への効率的対応ができるようになる

 プラットフォームは、ゲートキーパーを排除し、より効率的に大規模化できるので、パイプラインを打ち負かす。

 最近まで、ほとんどの事業は商品を中心として構築されていた。パイプラインの端で設計や製造を行い、反対側の端にいる消費者にその商品を届けていたのである。もちろん今日でもまだパイプライン型ビジネスは多くあるが、プラットフォーム型ビジネスが同じ市場に参入してくると、勝者になるのは必ずと言っていいほどプラットフォーム型だ。

(わかりやすくするため、ここでは製品もサービスも「商品」とする。両者の主な違いとして、製品は有形で物理的な対象物だが、サービスは無形であり活動を通して届けられる。従来のビジネスでは、どちらも直線的バリューチェーン、つまりパイプラインを通じて届けられる―本書で両者をひっくるめて論じる根拠もそこにある)

 理由の一つとして、パイプラインでは、非効率的なゲートキーパーが、生産者から消費者までの価値の流れを管理している点が挙げられる。たとえば、伝統的な出版業界では、編集者が何千もの候補作品の中から数人の著者と作品を選び出し、どうか人気が出るようにと願うことになる。主に本能と推測に基づいた、時間のかかる労働集約型プロセスといえる。

 それとは対照的に、アマゾンがつくったプラットフォームの一つであるキンドルでは、誰でも本を出版することができるようになっている。消費者(読者)がリアルタイムにフィードバックすることを通じて、どの本が成功し、どの本が失敗するかが決まるのだ。このプラットフォーム・システムでは、伝統的なゲートキーパーである編集者に代わって、読者コミュニティ全体が自動的に市場のシグナルを発信するようになるのである。つまり、より速く、より効率的に規模に対応できるのだ。

 ゲートキーパーがいなくなれば、消費者にとっては、自らのニーズを満たす商品を選ぶ自由度が広がる。たとえば、従来の高等教育モデルでは、学生とその両親に、(大学の)経営管理、教育、施設、研究など、いっぺんにすべてを間に合わせるバンドル品の購入を強いていたといえよう。ゲートキーパーの役割を果たす大学は、貴重な学位証書をもらう唯一の方法として、パッケージ全体を買うよう要求できたのである。

 しかし、別の選択肢もあるのなら、従来型のパッケージではなく、使用するサービスを選ぼうとする学生が増えるに違いない。(学位でなく)単位ごとの修了書(サーティフィケート)であっても雇用する側が積極的に価値を認めるようになれば、大学側は他のものまでバンドリングするパッケージを売り続けることが次第に難しくなるだろう。

 当然ながら、コーセラ(Coursera)(訳注:多くの大学と提携してオンライン授業を行うサービス)などのプラットフォーム型教育会社の主な目的には、そうした単位ごとの修了書を発行することも含まれている。

 さらに、コンサルティング・ファームや法律事務所もバンドリング型ビジネスだ。そうした専門サービスに高額を支払うことを企業は厭わないかもしれないが、利用するためには、比較的若くて経験に乏しい担当者が提供するサービスも高値で購入しなくてはならない。

 将来的には、トップクラスの弁護士とコンサルタントは企業と個別に仕事をするようになり、それまで法律事務所やコンサルティング・ファームで行われていたバックオフィス機能や専門性の低いサービスは、プラットフォームが提供するもので間に合うようになるかもしれない。

 アップワークなどのプラットフォームでは既に雇用主向けの専門サービスを手掛けており、従来のゲートキーパーが押し付けていたような他のサービスとのバンドリングを排除している。