「反対思考」とは、文字通り、
反対に、逆に考える思考技術

 自工程完結において、あらかじめ、「最終的なアウトプット」を明確にしたり、手順をゴールから逆算して描くことも「反対思考」の1つです。ツッコミ第8系「要するに何なの?」、第10系「本当にそうなの?」とツッコまれないための思考技術です。

「実験する前に論文を書け」(『仮説思考BCG流 問題発見・解決の発想法』内田和成、東洋経済新報社)という言葉があります。

「行き当たりばったり、出たとこ勝負」ではなく、実験をする前に、結果を想定しておく。言いかえると、仮説(仮の答え)を立てることです。そして、その仮説を導き出す、適切な実験方法を考えてから、実験に取り掛かることで、ムダな実験や、実験のやり直しを防ぐのです。つまり、実験する前に既に論文の良し悪し、勝負がついており、「結論から先に考える」ことにより、ツッコミ第8系「要するに何なの?」とツッコまれないようにしましょう!

「反対思考」の力は超絶です。技術やサービスなどのイノベーション(革新)は、「反対思考」により、従来の常識や固定観念を覆してきた歴史と言っても過言ではありません。

 例えば、身近な例では、アイスクリーム。地域性はありますが、以前は、「アイスクリームは冷たく、夏に食べるもの」という常識や慣習がありました。そんな中、「冬に食べられるアイスクリーム」を開発して、大ヒットになりました。それがロッテの「雪見だいふく」です。

 アイスクリームつながりでもう一つ。20世紀初頭、アイスクリームは皿に載せて食べていました。「アイスクリームは皿にのせて食べるもの」でした。それを、ワッフルでコーン状に巻いてアイスを入れることを思いつきます。つまり、「皿にのせなくても食べられるもの」と同時に「食べられる皿」が発明された瞬間です。

 また、文化祭でもお目にかかる「お化け屋敷」。「お化け屋敷って暗いところでやるもの」って思っていませんか?そういうのを固定観念と言います。固定観念は、往々にして「~するもの」「~わけがない」「~はずがない」「~ねばならない」などという仮面をかぶっています。あたり前として疑問にすら思わない。「お化け屋敷は暗いもの」っていう具合に。

 さて、その固定観念を打ち破るやり方はこうです。まず、前提となる条件を洗い出し、その前提を強制的に逆転させる。つまり、「前提逆転」。

 ちなみに、前提とは、「物事を成立させる条件、根拠」のこと。中でも特に、常識や慣習といった「あたり前や周知の事実」として、疑問にすら思わないことに着目したい。それを逆転できれば、まさに革新です。アイスクリームで言えば、「夏に食べるもの」から「冬でも食べられる」みたいに。

 それでは、実話をもとに「前提逆転」を見てみましょう。

 ある年の台風で育てていたリンゴの9割くらいが、収穫前に落ちてしまいました。
リンゴ農家は悲しみにくれていました。「残ったリンゴは売れない。金にはならない」と。
そんな中、ある農家は、前提である「金にはならない(儲かるはずがない)」に着目し、落ちなかったリンゴを“落ちない”リンゴ。つまり、「縁起物として受験生に売ることはできないだろうか」と考えました。この逆転の発想で、高価なリンゴがあっという間に完売したと言います。

 逆に、落ちてしまったリンゴに対しては、激しく恋に落ちるお守りとして、恋活する人に売れるかもしれません。「落ちてしまったリンゴには商品価値がない(売れるはずがない)」という前提を逆転させたのです。余談ですが、リンゴには、英語で「かけがえのない人」と言う意味もあるため、売上を後押しするでしょう。

 このように、「反対思考」で、ツッコミ第10系「本当にそうなの?」とツッコまれないようにしましょう。

 本書では、「反対思考」として、潜在リスクに気づくやり方にも触れています。
 興味を持たれた方は、ぜひ、本書『誰でもストーリーでわかる! トヨタの思考法』をご覧ください。(https://www.cjqca.com/)