メンバーの真意を教えてもらう姿勢が大事

 具体的なケースをもとに、実際に質問をしてみましょう。メンバーから次のような提案を受けたとします。皆さんも、何を質問するか考えながら読んでください。

【提案】
 30代女性向けに商品をリニューアルする提案をします。
 30代女性の購入者の減少が顕著になっていますが、市場調査の結果、デザインが陳腐化したことが最大の原因だということがわかりました。
 そこで、30代女性50名にアンケートをしたところ一番人気の紫色のパッケージへの変更を提案します。今年の流行色は紫色ですから、多くの女性の購買意欲を刺激します。
 発売は年末商戦に合わせて12月25日に設定します。インパクトを生むために、価格は他社の同等商品5000円よりも安い4500円でいきたいと考えています。他社よりも安いから絶対売れます。よろしくお願いします。

 まず、第一の観点「それは事実なのか?」については、こんな質問が考えられるでしょう。

【質問1】「30代女性の購入者の減少が顕著」であることを示すデータはありますか?
【質問2】「市場調査」のデータを見せてもらえますか?
【質問3】「今年の流行色は紫色」であることを示すデータはありますか?
【質問4】「紫色」で商品をリニューアルするとのことですが、他社には紫色のラインナップはないんですか?

 次に、第二の観点「なぜ、そう言えるのか?」については、こんな質問が考えられます。

【質問5】「30代女性50名にアンケートをした」とありますが、紫色を選択する根拠としては母数が少なくありませんか?
【質問6】「紫色が30代の女性の購買意欲を刺激」する根拠はありますか?
【質問7】「他社より500円値段を下げる」のが最も効果的だという根拠はありますか?

 第三の観点「論理的に正しいか?」については、こんな質問をする必要があるでしょう。

【質問8】「30代女性の購入者減少」という課題の原因について、「デザインの陳腐化」以外には検討しましたか?
【質問9】「デザインの陳腐化」が原因だとして、解決策は「紫色への変更」以外には検討しましたか?
【質問10】「紫色に変更」したら、30代女性の購入者はどのくらい増えると考えていますか? KPIは設定していますか?

 さらに、第四の観点「意思決定できるか?」については、次のような質問をするべきでしょう。

【質問11】他社より500円下げた場合、利益率はどのように変化しますか?(財務的観点)
【質問12】12月25日までに出荷することは可能ですか? 関連部署には確認を取っていますか?(実現可能性)

 このように、質問すべきポイントはたくさんあります。
 このときに注意が必要なのは、メンバーの提案を否定するような聞き方にならないことです。まず提案そのものを好意的に受け止めたうえで、詳細について「教えてもらう」というスタンスで質問しなければ、メンバーは詰問されるような印象をもってしまうので気をつけてください。

 もちろん、メンバーの真意を理解したうえで、提案内容に不足点があれば、それを指摘して完成度を高めてもらう必要はあります。しかし、その前提として「教えてもらう」ことが不可欠なのです。