マネジャーは「答え」を知らない

 そして、会議での質問は「誘導尋問」のようになってはいけません。
 たとえば、利益率の低下を経営陣が懸念していることを知っているために、マネジャーが「値下げは避けるべきだ」という意見をもっている場合に、その結論に導くために「利益率が下がるのはまずいよね?」「ほかにも手があるんじゃないかな?」などと、相手を誘導するような質問を繰り出せば、メンバーは“忖度”を強要されているように感じるでしょう。これが、建設的なディスカッションを阻害することに繋がってしまうのです。

 ですから、このような場合には、率直に経営陣の懸念を伝えたうえで、それでも値下げをするメリットを追求すべきなのかどうかを、話し合うべきでしょう。重要なのは、「30代女性の購入者減少」という課題を解決するために最善の解決策を見つけることに純粋に取り組むことです。もしも、徹底的な検討の末に「値下げ不可避」という結論に至れば、マネジャーは「いかに上層部を説得するか?」を考えるべきなのです。

 マネジャーは、この姿勢を堅持することが非常に重要です。
 この姿勢に徹するからこそ、メンバーとの率直なディスカッションが成立し、その過程を通して「最適解」を見出せるからです。しかも、そのようなマネジャーに対して、メンバーは信頼を深めてくれるでしょう。この信頼感こそが、「会議の品質」を根本で支えてくれるのです。

 もちろん、マネジャーは、率直な質問を通して提案内容をしっかりと理解したうえで、自分なりの「意見」をもたなければいけません。しかし、決して、それが「答え」だと勘違いしてはなりません。自分の「意見」が「答え」だと勘違いした瞬間に、すべての質問は「誘導尋問」へと変質してしまうからです。

 場合によっては、自分の「意見」とは異なる提案内容になったとしても、4つの観点を満たし、成功確率も7割を超えると判断できるならば「GOサイン」を出す。それが、マネジャーの役割なのです。

 自分は「答え」を知らない。
 だからこそ、メンバーとの会議に臨む──。
 この姿勢を徹底できたとき、必ず、「会議の品質」は高まっていくはずです。ぜひ、覚えておいていただきたいと願っています。