読者も気づいていない権威性

 今回、読んでみたのは、次の三冊です。

 1. 岩瀬大輔『入社1年目の教科書』

 2. ティナ・シーリグ『20歳のときに知っておきたかったこと』

 3. 見城徹、藤田晋『憂鬱でなければ、仕事じゃない』

 1.は新入社員向けの入門書、2.は海外有名大学の講義録、3.は中堅社員に向けた心得集、といったそれぞれまったく異なる体裁ですが、大きな共通点があります。それは、「著者がひとかどの人物である」ということです。

 1.の岩瀬氏は保険会社・ライフネット生命の若き副社長、2.のティナ先生はスタンフォード大学の教授のようです。そして、3.の藤田氏はIT界の、見城氏は出版界の寵児として知らない人はいません。

 人を説得するときの重要な要素として、「権威性」というものがあります。いわゆる「東大教授も絶賛」とか「芸能人のナントカさんも愛用」というアレです。「そんな看板にだまされるなんて」と嘲笑している人も、実はビジネス書を読むときは著者の「権威性」に心をつかまれているのです。

 もちろん、反論もあるでしょう。「いや、私は何もスタンフォード大教授という肩書きに反応したわけじゃなくて、それだけの地位にある人なら実力もあるはずだから、と客観的に考えて、この本を読んだのだ」と。

 それは間違ってはいません。しかし、あたりまえのことですが、ハーバード大学の教授だから、マイクロソフトの役員だから、その人のいうことがすべて正しい、ということもないはずです。