顧客への接触も、やりかた次第では
「解約増」につながってしまった

試行錯誤をした中では、もちろん失敗もありました。
「サンクスコール」の実施タイミングです。
サンクスコールとは、会員制企業では一般的に導入されているもので、新規に会員になった方に電話をかけ、入会に対する感謝を伝え、疑問や困っていることがないかを確かめるものです。

WOWOWでもサンクスコール自体はそれ以前から、解約抑止というよりサービスの一環として行っており、内容も一般的なお礼でした。

これを、解約抑止施策として位置づけ、トークの内容も見直して、加入翌月の初めにコールし、その月末の解約を少なくしようと思ったのです。

ところが、その施策を導入して迎えた翌月末。
「解約率、どれぐらい下がってるかな?」と期待して結果を見た私たちの目に、思いもよらない結果が飛び込んできました。
サンクスコールを実施していない顧客よりも、実施した顧客の方が、解約率が高くなっていたルートがあったのです。

「サンクスコール」が
「解約タイミング」のお知らせに!

「ええっ!なんで?」
お金をかけて施策を打って、やらないほうがマシだったという結果を出すなど許されません。私たちはショックを受けました。

ここで言うルートとは、顧客が加入申し込みをした経路のことを示します。
解約率がアップしてしまったのは、「特定の提携企業のお客様にWOWOWから電話し営業をした人」のルートでした。

結果を正確に評価するために、同じ条件の群の中に施策対象としない人(サンクスコールをしない人)を10%程度残して両者を比較しました。するとこの前述のルートでは、コールしなかった群よりも、コールした群の方が解約率が高かったのです。

なぜコールした方が、解約率が高かったのか。
「特定の提携企業のお客様」は「WOWOWに興味をもって電話してきた人」に比べ、WOWOWに対する関心や理解が低く、無料期間付キャンペーンを案内してやっと加入していただくことが多くなります。
つまり、「WOWOWのことはよく知らないけど無料だから加入した」という人が多いということです。

そんなお客様に対して、加入翌月にコールすると、そろそろ無料期間は終了ですよ、というお知らせをしてしまうという意味を持ちます。つまり、解約タイミングを失念していた人に、わざわざそれを思い出させてしまい、実際に解約の増加につながっていたのだと推測されました。