◎患者も慢性痛についての知識がある程度以上あるため、不要な医療は避ける傾向がある

 一般市民への健康情報提供をメインとしたWEBサイトが多くあり、質の高い情報に容易にアクセスできる。また、オーストラリアでは行政が、慢性痛(腰痛)について一般市民への啓発活動を積極的に行っている。

◎集学的痛みセンターシステムがある

 集学的とは、患者の病状に応じて、領域横断的に様々な治療法を組み合わせること。北欧諸国やオーストラリアは国策として、慢性痛対策の中心となる集学的痛みセンターが、人口150万~200万人あたりに1ヵ所配置されている。手術適応がない(原因がよくわからない)慢性痛は痛みセンターに集約され、集学的な治療が行われる。また、痛みセンターは、医療者や一般市民への啓発・教育・広報活動も担っており、地域の慢性痛診療のリテラシーの向上に寄与している。

 ちなみに、日本では集学的痛みセンターは、横浜市立大学付属市民総合医療センター、愛知医科大学など、全国に数箇所しかない。

◎心理社会的要因についての卒前(卒後)教育が医療者に行われている

 ほとんどの国では、健康と疾患に関連した生物・行動・心理・社会学の知識を統合した学問領域である行動科学(behavioral science)が卒前に必須であり、疾患や症状に心理社会的要因が関与しうる、ということを医療者が知っている。また、卒前・卒後教育の中で慢性痛について教えている国もある。

 日本でも、外圧により(医学教育の国際認証で行動科学が必須のため)ようやく行動科学が医師の卒前教育に取り入れられることになったが、日本国内に、教えられる人はどれだけいるのかは不明。

「痛み治療が進んでいる国々なら、冒頭の男性のように、安易な手術が行われるようなことはありえない」

 北原医師は断言する。