システムの向こうにいる
生身の人間を感じさせる

では顧客の体験価値を上げロイヤルティを向上させるためには、どのポイントに人を介在させ、その存在を顧客に感じてもらえばよいのでしょうか。

購入や利用開始は、できる限りシステム化することが必要です。新規の顧客をスムーズに流入させる必要があるからです。

しかし、商店街の八百屋や魚屋で店の人に新鮮な食料品の見分け方を教えてもらえる、というような購入時の付加価値は、生活者にとっては見逃せない魅力です。

商店街の八百屋や魚屋はすべてを人が行っているから、当たり前にこうした付加価値がついてくるわけですが、システムを通しても、部分的に、裏側で顧客の動きを見つめている人がいることを感じさせるコミュニケーションは可能です。

ホームページ上でのFAQ以外に、実在する社員に質問できるサービス窓口を設けたり、SNSの公式アカウントで担当者がメッセージを発信したりしている企業はそれを狙っています。システムを通していても、このようなサービスの向こう側には、顧客が人の存在を感じるからです。

そして生身の人間が存在することで人件費を補って余りある効果が得られる場面には、人を介在させることが重要です。WOWOWの解約リテンション施策は、システムだけでは得られない効果が人の介在によって得られる最たる例だと思います。

顧客にとって不愉快なやりとりは、人でもコンピューターでも当然論外ですが、「赤穂浪士からロッキー」の顧客のように、上質な顧客体験に導き、ロイヤリティが感じられるコミュニケーションは、人間が介在しないとできないと私は考えます。

リテンションの場面でこうした体験をし、解約せずに留まった顧客は、他の同業サービスに簡単に乗り換える可能性が低く、その後はよほどの事情がない限り解約しません。