持続可能な漁業を模索し続けたアイスランド

 近代アイスランドの発展に、漁業は不可欠な存在だった。人口は32万人でも、その年間漁獲量は120万トンと世界第12位である (日本は第5位)。小国であるアイスランド経済にあって、輸出総額の約半分を、魚とその加工品が占める。特に金融業が力を失った今、経済を下支えする基幹産業である。

 海に囲まれた国だけに、漁業の歴史はさも長いと思われるかもしれない。しかし、船を作るには木と鉄が要る。どちらも、資源の乏しいアイスランドでは長年手に入らなかったものだ。実際にアイスランドがトロール船を手に入れ、本格的に魚を輸出するまでになったのは、20世紀に入ってからのことである。

 そして本連載でも幾度か触れてきたが、この国においては何事にも自然や外交上の危機がつきまとう。漁業が盛んになるとすぐに、資源の枯渇という問題に直面した。1960年代前半、アイスランドは空前のニシン大漁期を迎えた。日本の漁村でもその昔はよく耳にしたように、アイスランドにも漁師の「ニシン御殿」が立ち並んだ。ところが60年代も後半に差し掛かると、それがまるで嘘だったかのようにぴたりと穫れなくなった。

 この経験を重く受け止めたアイスランドは、これを機に海洋資源調査を進める。その結果、徐々に資源管理へと足を踏み出した。ヨーロッパ諸国で価値の高いタラをはじめ、ニシンやサバ、シシャモやカレイなど、魚種に応じて漁獲量を船に割当て、魚の乱獲を防止するようになった。

 そして過去30年以上にわたる取り組みは、次第に効果を上げている。資源管理を進めたノルウェーとアイスランドの漁獲量が比較的水平に推移していることが、下のグラフからも見て取れるだろう。

比較的安定的なアイスランドやノルウェーに対し、日本は右肩下がりだ