世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

まずはこの用語を押さえておこう

 今回は、ワインショップやワインコーナーで頻繁に見かけるワイン業界の用語について、本当に基礎的なものを解説しました。ちなみに、基本的なぶどう品種については、以前の記事をご参照いただければと思います。それでは、さっそくそれぞれの用語について解説していきましょう。

■ヴィンテージ
「収穫」「収穫年」を表し、原料となるぶどうが収穫された年を指す。ぶどうは他の果実に比べ天候の影響を大きく受けるため、収穫年により育ち具合に大きな差が生まれる。そのため、収穫年によってワインの出来も左右され、同じ土地、同じ生産者であっても、ヴィンテージが変わるとその質や価格が大きく変わってくる。

■オフヴィンテージ
 一般的には、ぶどうの出来がよくない年、天候が悪かった年のことを指す。通常、オフヴィンテージと呼ばれる年は、あえて果房が未熟なぶどうを切り落とし、残った果房に集中的に光合成を与え、養分を吸収させるので、ワインの生産量は少なくなる。生産者によっては、オフヴィンテージの年の出荷を減らしたり、まったく生産しないこともある。

■テロワール
 ぶどうが育つ自然環境のことで、土壌、気候、場所を指す。ぶどうは自然環境によって個性が際立つため、各地でその地のテロワールを生かした栽培法が用いられている。

■タンニン
 ぶどうの果皮とタネから生じるポリフェノールの1種。ワインの味に深みと複雑さを与え、ワインの熟成にも大切な役割を果たす。タンニンは、時間の経過とともに澱(タンニンやポリフェノールが結晶化したもの)となって瓶底に沈んでいき、徐々にタンニンが弱くなることで、渋みや苦味が消えた柔らかい味わいのワインに変化していく。

■オールドワールド(旧世界)
 フランスやイタリアなどのヨーロッパ各国、レバノン、イスラエルなどミドルイーストで醸造されるワイン(またはワインの国)を指す。オールドワールドのワインの歴史は非常に古く、紀元前にまでさかのぼることもある。各地の特徴を生かしたワイン醸造が行われ、今も昔ながらの製法を継承し、その伝統を守っている地域が多い。

■ニューワールド(新世界)
 ワイン醸造の歴史が浅い生産国やそのワインを「ニューワールド(新世界)」と呼ぶ。代表的な産地として、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、カナダなどがあげられる。たいてい、これらの国にワインが伝わったのは18世紀ごろで、キリストの宣教師によってぶどうが植えられたことがきっかけとなっている。

■シャトー/ドメーヌ
 主にフランスのボルドー地方の生産者を「シャトー」と呼ぶ。これは昔からボルドーの生産者がお城(シャトー)のような建物でワインを生産していたことに由来する。ボルドーには7千以上のシャトーが存在し、1万種類以上のワインが生産されている。一方で、ボルドーのような大きな建物がなかったブルゴーニュでは生産者を「ドメーヌ」と呼ぶ。名前に違いはあるものの、両者の定義に大きな違いはない。

■ボディ
 ボディとは、飲んだ感触や味の強弱、総合的な飲み心地などを表現する言葉。ワインは甘み、酸味、タンニン、アルコール、そしてボディで構成されている。ボディはワインの骨格、強さ、重厚感、感覚などによってフルボディ、ミディアムボディ、ライトボディと分けられる。ワインの味を表現する場合にはほぼ必ず使われ、そこからワインの特徴を知ることができる。ただし、ボディの定義や基準は存在しない。